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特集 漁船海難防止

 

漁船海難の現状について

海上保安庁警備救難部航行安全課

 

一、はじめに

 

平成十一年一月二十日午前七時一分ごろ、八丈島東方約八七カイリの公海上で、マグロ延縄漁船新生丸(一九トン、乗組員六人)が銚子港向け航行中のところ、台湾からカナダ向け航行中のケミカルタンカーKAEDE号(パナマ船籍、一三、五三九トン)と衝突、KAEDE号はそのまま逃走、一方新生丸は船体が転覆し乗組員一人が行方不明となる惨事が発生したのは記憶に新しいところです。

この海難原因の詳細な記載は省略しますが、海難審判の審理過程でも明らかなように新生丸当直者の居眠りが主因といわれています。

一般的に、漁船は船舶としての運航に加え漁業活動を行うことから、乗組員にとっては運航時の当直作業と操業作業の両方を行うなど、厳しい労働環境にあり、慢性的な睡眠不足や操業に伴う肉体的疲労が船舶の安全な運航に少なからず影響を及ぼしていると考えられます。

そこで、今回は漁船海難の実態に加え、漁船の航行中における自動操舵使用中の居眠り海難にも触れてみたいと思います。

 

二、要救助船舶の現状

 

(1) 要救助船舶および死亡・行方不明者の状況【1図】

平成十年において、救助を必要とする海難に遭遇した船舶(要救助船舶)の隻数は一、七二六隻で、昭和二十八年以降で最少となった前年に比べて四八隻増加したものの、最近十年の傾向では漸減傾向となっています。

海難に伴う死亡・行方不明者数は一五七人で、前年に比べて一三人減少し昭和二十八年以降最少となりました。

 

(1図) 要救助船舶の状況

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船舶用途別では漁船が九二人で全体の約六割を占めるなど、まだまだ漁船の海難には悲惨なものが多く、ひとたび事故を起こすと人的被害は甚大な結果が生じていることがうかがえます。

(2) 船舶用途別の状況【2図】

船舶用途別では、プレジャーボート等(七三六隻)が平成九年以降二年連続してトップで、次いで漁船(六二二隻)が二年続けて二位となりました。

 

 

 

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