<プロフィル>
昭和十二年生まれ宮城県出身
昭和三十六年海上保安大学校卒業、平成四年四月第十一管区海上保安本部長、六年四月海上保安庁警備救難部長、八年四月警備救難監、九年四月退官、同四月海上保安協会理事
十年十月から現職
ナホトカ号、ダイヤモンドグレース号事故の反省から具体的にどのような対応策がとられ、またとられようとしているのか、わが国の代表的防除組織、海上災害防止センターの坂理事に尋ねた。
―― ナホトカ号、ダイヤモンドグレース号の事故後の取組みを。
坂 事故後、運輸省内の委員会の結論もそうだったように、当センターとしては外洋での油防除体制が不十分だったことへの反省です。
一つには、国と日本財団の補助でノルウェーからトランスレックシステムを購入、外洋での油防除機能を高めました。
二つ目は、センターと契約している防災措置実施者の増強です。現在全国の一四六防災業者と契約していますが、どちらかというと湾内事故対応を想定していたので、今回の事故を契機に外洋作業に対応できる防除能力のある業者を増強することとしています。
ダイヤモンドグレース号事故の反省としては、当センターの消防船に油防除資機材を搭載し迅速な立ち上がりを目指すことにしました。
―― 開発中の新油処理剤とはどういうものですか。
坂 新型の処理剤は、自己かく拌型(セルフミキシング・タイプ)といいます。日本で今使われている油処理剤は、散布したあと、船の航走波や放水等によってかく拌することにより水中に分散していくという作用になるのですが、自己かく拌型では波のエネルギーだけで水中に分散していくので人為的なかく拌が不要なのです。
現在、世界では自己かく拌型がすでに主流となっています。毒性が強いことからわが国に入ってこれなかったのですが、センターではわが国の基準に合うような低い毒性で、しかも同等の処理能力のあるものを開発しました。
油流出事故は、C重油の場合が多いのですが、新型はC重油に効果的ですし、今までの五分の一の量で同じ効果を発揮しますので、画期的な処理剤として歓迎されるでしょう。
なお、この秋には、型式承認が得られる見込みであり、今後は効果的な散布方法の確立および散布器の開発と普及に努めて行こうと考えています。
―― サハリン地区の石油開発に備えての油防除対策はどうなっていますか。
坂 サハリン石油開発は、サハリン北部の東岸約一六キロメートル沖合の海底を採掘し生産するもので、この七月から操業にはいりました。かつて北海油田で発生した暴噴事故のような大事故が絶対に起きないとは言えませんので、センターでは日本に影響が及ぶような事故があったときの対応を研究しています。また、防除責任は開発会社であるサハリンエナジー社にありますので、同社と事故時の対応について打合せをしています。
なお、同社は、地質的に暴噴事故の発生のがい然性は極めて低いことを強調していました。
―― 海上災害防止に関する抱負をお願いします。
坂 当センターは民間海上防災機関の中核組織であり、これからの海上輸送実態に対応した最適な機能を目指して常に体制を整え、責任を果していかなければならないと考えています。
(八月四日、海上災害防止センターで、聞き手=村上)