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菅野 モーターボートの楽しみはどんなものですか。

根本 人は私のことを釣り気違いとみているようですが、私は船にいるだけで楽しいのです。ですから釣りは二の次ぎです。

船が好きでボートを買う人も同じで、船に乗るそのことが一番ではないでしょうか。

菅野 自然との触れ合いとか船との一体感はヨットの方が強く感じるのではないでしょうか。

山本 ヨットは風を受けて自然にまかせて操船するところがいいですね。今日も朝から海に出たくて八景島までセーリングしてさっき入港したばかりです。ヨットの操船は体で覚えなくてはなりません。ですから手取り足取り教えるのではなく、体で風と船の走りの感覚をつかむということが大切なのであまり手を出しません。

菅野 そんなに好きですと他人に舵は渡したくないのでは……。

山本 友人に舵を取ってもらうこともありますが、やはり落ちつきません。自分の船はシングルハンドが基本ですから、自分のポジションがあるので、ゲストが乗るとどうも落ちつきません(笑)。

 

ヒヤリハット

 

菅野 ところで、私は何回かありますが、ヒヤリハットの経験はありませんか。

根本 私は、父親から厳しく仕込まれましたので、本当にヒヤッとした経験はありません。強いて挙げれば、濃い霧の中を走っていて伊豆大島の岸というか岩に危うく衝突しそうになったことでしょうか。用心して減速していたことと漁探を作動させており、岸に近寄ったことを感じて注意を払っていたため、海岸の波のような音が聞こえたことから、大事には至りませんでしたが。

菅野 レーダーもない小型船では古いと言われるかも知れませんが五感を働かせることも大切だということですね。

山本 私は油壷に入るために三浦半島の諸磯湾を回るとき、うねりで岸に寄せられ岩に乗り揚げたことがあります。十秒くらいガタゴトしておりましたが、幸いよい波がきて離礁することができました。自分は岸に近づいていないと思っていたのですが、一波ごとに寄せられたのでした。それ以後岸に寄せられないように、沖よりのコースをとるようにしています。

また、初めて入る漁港の時は、事前に海図で調べるようにしています。

もう一つは、漁船が底引き網漁を終わってスピードを上げて近づいてきて、私のヨットの後ろをすれすれでかわり、ヒヤッとしました。後部甲板で網の補修をしていたようで、漁船のブリッジには人はいませんでした。

 

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菅野氏(左)、山本氏(中)、根本氏(右)

 

根本 私は漁船をみたら、自動操舵に任せ作業していてブリッジ無人航行が普通だと思うようにしています。

菅野 自動操舵で航行中にいねむりや他の作業をしていての事故が多いようです。真っ直ぐ向かって来る船は前を見ていないのではないかと一応疑うのが賢明かもしれませんね。

ある法則によれば、一〇回のヒヤリハットは一回の事故を呼ぶといえます。ヒヤリハットはない方がよいのですが、生きた教材とも言えます。事故にならなくてよかったとホッとするだけでなくどうしてそのようになったかを反省、検討することが、事故防止につながります。また相手船の方が悪ければコンチクショウと思うだけでなく反面教師として学ぶことですね。

 

 

 

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