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財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会

理事長 高野武王(たかのたけお)

 

<プロフィル>

昭和九年生まれ横浜市出身、昭和三十二年海上保安大学校卒業、平成三年四月海上保安大学校長、四年四月退官、四年四月(財)海上保安協会審議役、四年六月同協会常務理事、五年四月(財)日本海洋レジャー安全・振興協会常務理事を経て、十一年六月二日から現職

 

―― このたびは、理事長にご就任おめでとうございます。さて、プレジャーボート等の海難はここ二年連続でワーストワンですが。

高野 誠に残念な結果です。プレジャーボート等の海難は上昇トレンドにあるので、このまま定着する可能性がありますね。

当協会が推定したプレジャーボート保有隻数をみると、八年度(三三万六千隻)と九年度(三四万九千隻)で約三・九%の増加に対して海難隻数も六四九隻と六七五隻で約四%増であり、保有隻数に応じて海難隻数が増加していることを意味しているようです。願うならば隻数が増加しても海難隻数が減少する傾向になってもらいたいものです。ただ死亡・行方不明者が漸減傾向にあるのは嬉しいことです。しかしこれもいつでも増加に転じる可能性を有していると考えておく必要がありそうですね。

当協会では十年度に東京湾におけるプレジャーボート等の安全運航に関する調査研究を実施しました。結果は本誌に紹介してますので一読いただければ幸いです。

―― プレジャーボートの海難種類では機関故障が多いですが。

高野 皆さんは車感覚で乗っており故障がないことを前提としているように思います。確かに昨今のプレジャーボートのエンジンも車同様、技術的に向上しております。しかし海上の場合、海水という腐食性の強い水面で、さまざまな浮遊物がある中を走っているのですから、技術でカバーしきれない部分があり故障を起こす確率は高いわけです。加えて燃料、オイル、冷却水の点検をせずに出航して、燃料切れ等を起こすこともあり、機関故障の件数は多くなります。出港前の点検を励行してもらいたいと思います。

―― 救命胴衣の常時着用は。

高野 プレジャーボートの保有隻数は毎年増加していますが、その中心は小型艇です。いわゆるオープンタイプのボートですが、これらは少しの気象・海象の変化にも大きく影響されます。従って救命胴衣は常時着用をお勧めします。経験の浅い運航者にとっては、気象・海象の変化は必要以上に恐怖感をさそい、冷静な判断力を失うものです。救命胴衣を着用していれば安心感が持て冷静な判断ができるのです。そのためにも常時着用をお勧めします。法定のものが気に入らなければ、装備品とは別のファッショナブルなものを利用すればよいと思います。

―― 健全な海洋レジャーの発展に向けた抱負を。

高野 毎年小型船舶操縦士免許取得者が約九万人増加しており、本年は五級小型船舶操縦士の免許も加わり取得者数はさらに増加する傾向にあり、プレジャーボートの保有数も毎年着実に増加しており、さらに係留施設についても関係省庁が暫定係留施設を整備して、不法係留艇問題に積極的に取り組んでおります。プレジャーボートの発展に関する環境は整いつつあります。しかしプレジャーボートによる海洋レジャーが健全な発展を遂げるためには他人に迷惑をかけないこと、特にプロの人たちに迷惑をかけないことが絶対であることを肝に命じてもらいたいと思います。

そのためには安全に関する知識の習得、情報提供や事故時の対応体制の整備も同時に進めていくことがぜひとも必要なことです。以上のようなことを念頭におきながら事業を進めていきたいと考えています。

(六月九日、日本海難防止協会で、聞き手=村上)

 

 

 

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