d. GPS車両位置検知精度
今回の現車試験では、GPS位置検知情報と比較できる正確な車両位置情報を取得していないことから、GPS車両位置検知精度は、マップマッチング処理により線路上に補正した距離で分析することとする。この際、ディファレンシャルの有効時と無効時では検知精度が異なることから、分けて整理する。また、走行中と停車中も分けて整理する。図4.3-9にGPS受信状況の良くない11月9日A線午前中のマップマッチング補正距離の度数分布を示す。なお、走行中に交通信号機の赤信号で停車したものは、走行中に含められる。また、図4.3-10にマップマッチング補正距離と車両走 行位置との関係を示す。
これらより、以下が判明した。
1]ディファレンシャル有効時と無効時では検知精度に大きな差がある。
2]停車中と走行中では、停車中の検知精度が高い。
3]ディファレンシャル有効時の停車中では、全てが14m(都電荒川線の車両長)以内に収まっている。一方、走行中で14m以内に入るのは約95%と若干低下し、その最大値は21mとなっている。推定される理由としては、FM受信回復時の単純な処理遅れや、前述したスムーズイング処理などでFM受信が回復してディファレンシャル処理データが正確になっても徐々に回復させること、などが考えられる。
4]ディファレンシャル無効時14m以内に入る率は、停車時で約73%、走行中では約56%と低下し、停車中の最大で28m、走行中では37mを示すものも見られる。
5]最大補正距離は町屋駅前で観測された。町屋駅前は上空は開けているが、東京タワー方向に高層ビルのある場所で、マルチパスなどによりGPS自体の検知誤差が多い上に、FM受信不良でディファレンシャルが利かないことなどがその原因と想定される。
4.3.4 評価
(1) GPS車両位置検知の有効性
本システムにおけるGPS車両位置検知情報は、
・停留所間の車両在線検知
・高速進行信号消去のための車両走行位置検知
・停留所での到着検知
の処理に使用される。そこで、上記試験結果に基づいてこれらの処理に有効であるか否かを中心に評価する。