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現有のA型、B型及びC型オイルフェンスの漏油速度は0.5m/s前後で平水中ではほとんど差異がない。このことは上述したように、オイルフェンス深さが約60cm以内であれば油層の形状は変らず、油滴の発生速度も同じであることから、ほぼ同速度で主流に運ばれて漏油することとなる。

D型オイルフェンスも油滴の発生速度は上述と同じであるが、他の型よりスカート深さが深い分漏油速度が高速度側になっている。

なお、カテナリー形状で曳航しても上記と同じ現象であるが、高速になるとカテナリー形状の中央部のスカート部分が水面近くに浮上し、フェンス前面に滞留した油は帯状になって漏油する。(巻頭の写真を参照)

2] 波浪中

表1-3-2に示したとおり、各型オイルフェンスの波浪条件は適用海域及びフェンスの大きさにより変えている。このため同一波浪条件による各型オイルフェンスの比較はできないが、表1-3-3に示すとおりA型及びB型は比較的低速度で漏油が発生している。このことは、両オイルフェンスとも比較的スカート深さが短いこと、また、重錘重量が軽いことから、波の上下動によりスカートの挙動が大きいことが挙げられる。スカートの挙動は、潮流によるふかれて若干スカート下部が下流側に位置した状態となる。波頂時は比較的安定しているが、この波頂時から波低時に至るスカート下部の重錘は、スカートの煽りを受けて波の動きより若干遅れて運動する。このため、スカート部の喫水が平水中と比べ浅くなること、また、スカートの煽りによる油滴の発生源ともなり、平水中と比べ低速度で漏油する要因となっている。

C型及びD型オイルフェンスは、上述の両フェンスによりスカート深さが長くかつ、スカート重量及び重錘重量が重いことから漏油速度が高速側に移行しているが、上述したスカート喫水が浅くなること、また、発生した油滴が波動により水中深く浮遊することで平水中より滞油性能が悪くなる。

3] 風浪中

潮流+波浪に風が加わると滞留した油層長さは風圧流によりさらに短くなる。油層が短くなることは油層の発生が同一速度であることから、油滴の浮上する距離が短くなることとなり平水中及び波浪中の滞油性能と比べさらに滞油性能が低下することとなる。

各型オイルフェンスの漏油発生速度や漏油の要因等を述べたが、オイルフェンスの滞油性能は、海象条件によっては、低い性能であることからオイルフェンスの使用にあたって海象状況や潮流速度を調査すること、また、波浪の影響が少ない海域で使用する必要がある。日本海で発生したナホトカ号事故で、多量のオイルフェンスを使用したが、荒れた海では何の役にも立たず、単なる粗大ゴミと化し多額の処分費用が請求されている。

 

 

 

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