上述した固定平板型オイルフェンスの油流出のメカニズムは、現象を簡単化した図解的なものである。
実海域におけるオイルフェンスは、浮体部(フロート)を持ち、波等に対する運動性を有しているため、波浪中及び風波中における越波の現象は、ほとんど発生していないなど若干異なることが挙げられる。
(1) 単独展張オイルフェンスの滞油・漏油のメカニズム
回流水槽における滞油性能試験時の概略図、漏洩状況に関する用語及び観察されたオイルフェンス前面等の油の挙動を図1-3-16に示す。
流速が遅いと図1-3-16に示した3] 先頭波、4] 界面波及び6] フェンス前面界面波等の発達は小さくかつ油滴の発生はない。流速が速くなるに従い上記の先頭波、界面波及び6] フェンス前面界面波が次第に発達する。
油漏れは、3] 先頭波及び6] フェンス前面界面波から発生する。3] 先頭波の油漏れは、流速が遅いと大部分が先頭波後方の油層中に浮上するが、流速が速くなると12] 主水流により、油滴が移送されスカート下部を通過して漏油する。
6] フェンス前面界面波の油漏れは、オイルフェンスの形状によって7] フェンス前面渦の大きさが異なるが、この反転流によって発生する。反転流は、流速が速くなる程速くなりまた大きな孤を画くようになる。
3] 先頭波からの油漏発生速度は、軽重油問わず0.4m/s〜0.45m/sの範囲である。
オイルフェンス後面(下流側)の水の流れは、スカート下部の深さが深くなる程13] 死水域(オイルフェンス後面の深さの流場)が長くなる。
また、スカート下部の深さが一定の時、流速が速くなる程、死水域は長くなる。