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(1) 広域運用機能(図3.1 「ネットワーク構成図」参照)

昨年度に開発したシステム(単独運用型)は、最大4箇所の雨量観測所からデータを収集することができ、それだけで土砂災害の危機管理に十分な効果を期待できます。しかしながら、他の市町村や関係機関によって広域に展開された多数の雨量観測所のデータを収集・活用できれば、強雨域の分布や移動方向、河川上流域での降雨状況等が把握可能となり、土砂災害危険への対応がより確実・容易となります。

今回、昨年度開発の単独運用型に加え、広域かつ多点からのデータの収集・編集・蓄積用プログラムを開発することにより広域運用機能を実現しました。その結果、本システムの利用者はモニターしたい「地域」を選択するか、観測ポイント(雨量観測所に対応)を直接指定することで、自地域以外の雨量データ及び危機管理情報を活用することができるようになりました。

 

(2) 再現シミュレーション機能(図3.2 「機能構成図」 参照)

本システムは、観測雨量データ、運用時に入力された気象注意報・警報、運用後に入力された活動体制設置情報、土砂災害発生情報等を時系列に編集・蓄積しますが、それらのデータを用いて当時の状況を再現させる機能(再現シミュレーション機能)も今回新たに開発しました。再現速度倍率は1〜3万倍の範囲で任意に設定できます。ちなみに、1倍とは現実の時間と同じ再現速度を意味し、1万倍では1日(86400秒)が8.64秒で再現されることになります。

この機能を用いると以下のことが可能となります。

1] 土砂災害危機管理システムの精度のさらなる向上

本システムは、豪雨時の土砂災害危険度を予測し、その危険度に対応した防災活動を示すことにより、土砂災害から人命の安全を確保することを目的としています。本システム導入時には、当該地域の特性(降雨特性、防災体制等)を考慮して運用条件を設定するため、そのままでも十分な実用性を有しています。しかし、再現シミュレーション機能を用いれば運用期間中に蓄積されたデータ(降雨状況、設置体制、土砂災害発生状況等)から当時の状況を再現させることができますので、豪雨時の土砂災害危険度の推移や防災活動のタイミングを検証することが可能となります。その結果、土砂災害危険度と防災活動との対応関係をより的確なものとすることができます。

2] 実践的な意思決定訓練・図上訓練の実施が可能

当該市町村等のデータだけでなく、過去に土砂災害を経験している他市町村等の雨量データ等を用いて当時の状況を再現させれば、様々なパターンでの実践的な意思決定訓練、図上訓練が可能となります。

この場合、「土砂災害発生の前日までは再現速度倍率を大きくして早送りする」、「土砂災害発生当日は再現速度倍率を小さくし、現実の時間感覚に近づけて再現させる」といったことも自由自在です。

 

 

 

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