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ただ唯一心を和ませたのは、全滅したと思われていた中で生後二ケ月位の仔豚が一頭逃げ出し、現場近くで発見保護されたことで、地元紙にも報道され話題となった。消防本部では、管内に点在する養豚、酪農施設への立入り検査を行い防火管理の徹底を指導した。

なお、焼死した豚は、地元の寺井町や保健所、県の尽力によって全て現場近くの休耕田に埋葬され、地区住民や関係者によって花が供えられている。

(井上信夫)

 

救急・救助

集中豪雨

南国市消防本部(高知)

 

はじめに

当本部は高知県のほぼ中央部に位置し、県の空の玄関高知空港を有する。昭和四三年一〇月一日に「南国市消防本部」が設立され、一本部、一署、一出張所、職員数六〇名、消防団一二分団、二二班、団員数三四四名で構成されている。

今回この事例は、高知県中部地域に、未曾有の集中豪雨、南国市でも総雨量九八六ミリの豪雨により市内全域で浸水、崩土の被害を受けた救助内容である。

 

一 事故発生日時等

(一) 発生日時 平成一〇年九月二四日

二三時一五分頃

(二) 発生場所 南国市岡豊町八幡、笠ノ川

 

二 活動時間の経過等

(一) 出  場 二三時一六分

(二) 現場到着 二三時二一分

(三) 救出開始 二三時二二分

(四) 活動完了  一時一一分

 

三 出場状況

救急車  一隊三人

消防車(ポンプ車)  一隊三人

消防車(タンク車)  一隊三人

救助搬送車  一隊三人

 

四 事故の概要

負傷した女性は、避難勧告中に避難場所へ向かう途中、豪雨による道路冠水で車が流され、笠ノ川大橋上流約一〇〇メートル広域農道水路に孤立したもの。

 

五 救助活動状況

二三時一五分一一九番通報により南国市消防本部で覚知、救助隊一隊が出場。現場到着後救助隊から消防本部へ出動要請有り、消防隊と救急隊が二三時二一分に出場する。

現場は、同市内を、東西に流れる国分川、笠ノ川の合流地点で普段からこの流域は水かさが深く流れも急である。豪雨により川幅が通常の約五倍の約一〇〇メートル、田畑、道路の冠水で予測をはるかに越える状況で、笠ノ川大橋北詰レストプラザ造樹園から東約一〇〇メートル、西は島橋、T氏宅から約一五〇メートル東に車が孤立し車上から救助を求める状態であった。要救助者への川岸からの救出は困難極めるため迂回し、下流から現場に向かうこととなった。隊員五名は資機材を携行し、T氏宅前広域農道から進入、要救助者の約一〇メートル手前までたどりついた。それ以上の進入は豪雨のため激流が非常に激しく二次災害の恐れが十分予測された。

隊員は現場の立ち木を利用し、自己確保を取り救命索発射銃を現場上部笠ノ川大橋に発射、橋の欄干と現場の立ち木を支点とし救出ロープ、確保ロープを設定し、斜め救出を開始した。隊員一名が立ち木方向から笠ノ川大橋方向にロープ渡過し要救助者確保後、負傷者を観察すると意識は清明で、寒さと恐怖で体力の低下がみられた。救出は進入経路と同じ方向に、救出し、バスケットストレッチャーを用いて、隊員四名で約一五〇メートル担架搬送し、救急隊に引渡し救出を完了した。

 

おわりに

今回の集中豪雨は、二日間で半年分の総雨量であった。瞬時に被害のでる地震災害と異なり水害、洪水の発生はじわじわと忍びこみ、突然襲ってきたり、人の移動を拒んだり、激流となって巨大なものを押し流し、その流出物が二次的に破壊していくなどさまざまかつ複雑である。今回は、予測をはるかに越える大雨が同市内でも家屋の全壊をはじめ床上床下浸水、田畑の冠水、道路、橋の損壊など大きな被害をもたらせた。今後、益々複雑多様化する救助事例が予測されることから、的確、迅速、安全な活動が行えるよう万全を期したい。

(山下真弘)

 

 

 

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