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二 先着中隊現場到着時の状況

先着隊到着時、出火建物は、火災の中期で、四階相当部分に設けられている排煙口の全面から黒煙を盛んに噴出し、北側一・四階及び南側二・三階相当部分の開放された開口部においても火炎の噴出が激しかった。さらに、南側は渡り廊下で旧工場と繋がっている状況で、西側も二階相当部分から黒煙が噴出していた。工場は、稼働時間外で工場内は無人であるものの、隣接建物が近接していることから延焼危険大の状況であった。

 

三 消防活動状況

第一出動隊により延焼危険の大きい北側及び西側に主として筒先を配備する。第二出動隊だけでは南側・東側が手薄の状況であり、出火建物が五階建で、延焼が上階に及んでいることから梯子車の増強と共にタンク車及び指揮体制の強化を図るため、第三出動・第三指揮体制を要請した。

二時一二分に第二出動隊、二時二二分に第三出動隊が現場に到着し、その後梯子車が部署し、北側二線、西側四線、南側六線、東側二線及び西・東に梯子車が部署した。これにより全面の包囲隊形が整うが、発泡スチロールの燃焼に伴う濃煙が工場内に充満し、時折爆発音と共に燃焼を強めている中で、内部進入がままならず、消火活動は困難を極めた。

三時三〇分頃から消防隊の放水が勝り徐々に鎮圧状況に移行した。四時三三分に指揮体制を第二に縮小し、四時四九分に鎮圧した。

しかし、火災は鎮圧したものの、五階上部及び陸屋根(約千m2)の構造が波形鉄鋼材の上に木合板性のシージングボードを乗せたトタン葺きであり、長時間に及ぶ下方からの加熱のため屋根全体のシージングボードが炭化し、燻煙状態であった。そのため、屋根全体のトタンを剥がしながらの残火処理となり一四時二二分ようやく鎮火に至ったものである。

 

四 おわりに

本事案は、指定可燃物である合成樹脂(EPSビーズ及び発泡スチロール)を大量に保有している五階建て、建築面積二、二一三m2、延べ五、一二二m2という特殊な用途の建築物における消火活動事案である。

火災原因については、現在も調査中であるが、関係者に対して可燃性物質を取り扱っている意識のもとに建物管理を含めた防火管理体制の強化を望むところである。

また、消防隊も大変苦労した事案であるが、EPSビーズ及び発泡スチロールの燃焼の激しさを痛感し、対応についてさらに研鑚の必要を感じた事案であった。

(中村正秀・鞠古長良)

 

救急・救助

救命の輪により完全社会復帰した事例

和泉市消防本部(大阪)

 

一 は じ め に

当消防本部は、大阪府の南部に位置し、北は堺市、高石市に西は泉大津市、岸和田市、忠岡町に東は河内長野市、南は和歌山県に隣接しており、関西国際空港から約二〇kmの位置にあります。

行政面積は、八四・九九km2、南北に約一九km、東西に約七kmと細長い形状を示し、地勢は、和泉山脈の一部を構成する山地部、それに続く緩やかな丘陵部、そして北部の平地部と概ね三つの地域に大別され、温暖な気候風土に恵まれた和泉市の歴史は古く、旧石器時代の石器が見つかっているほか、弥生時代に栄えた集落遺跡で全国的に有名な池上曽根遺跡などがあり、考古学上の貴重な地域でロマンのある和泉市と言えます。

人口約一七万二千人、消防体制は、一本部、一署、一分署、三出張所、職員数は一二五名、第三次和泉市総合計画により、緑と歴史と交流のまちづくりによる「豊かさを共有する人間都市・和泉」の実現を目指しています。

救急体制は、本署二隊、分署一隊の計三隊を運用、平成七年二月に救急高度化を図り高規格救急車第一号を配置し平成一一年四月には、すべての救急車を高規格救急車とし、現在救急救命士一二名が活動しています。平成一〇年中の救急出場件数は五、〇七二件であり、都市開発と共に救急出場件数も増加傾向にあります。

ここに紹介する救急事例は、心肺停止状態にある傷病者を家族が発見し心肺蘇生法を実施、到着した救急隊の特定行為による救命処置及び医療スタッフによる懸命な救命処置により完全社会復帰を果たした事例である。

 

 

 

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