(八) 地域協力体制づくりの推進
高齢者等災害弱者を災害から守るためには、地域住民等の協力が不可欠です。この地域協力体制づくりについては、昭和五一年から隣保共助体制づくりとして進められていましたが、平成二年から実施した重点推進の成果と平成三年度の調査研究の結果を踏まえ、平成四年七月から、災害弱者個人に対するものと社会福祉施設に対するものに分け、「消防のふれあいネットワーク」をスローガンに新たに推進しています。
ア 推進項目
(ア) 災害弱者の把握
(イ) 地域の協力体制づくり
(ウ) 防災教育訓練等による地域の防災行動力の向上
(エ) 署内推進体制や会議の充実
イ 推進方法
(ア) 災害弱者個人に対する「消防のふれあいネットワーク」
町会・自治会、自主防災組織等による地域住民が一体となった自主的な救出救護体制づくりを次のように推進しています。町会・自治会単位や班単位のネットワークが有効と考えられます。
消防署
住民の防火防災意識、相互協力の意識を醸成し、災害弱者と住民が共に話し合える場づくりを行うとともに、教育訓練を実施する。
災害弱者本人
災害弱者本人、家族の意識の高揚を図り、地域社会に積極的に参加し、近隣者との「良い関係」を醸成するとともに、教育訓練に参加し、災害対応力を高めておく。
住民
住民自身の意識を高揚し、災害弱者とともに訓練や話し合いの場に参加して、災害時の情報連絡体制及び救出救護体制をつくる。
(イ) 病院や老人ホーム等社会福祉施設に対する「消防のふれあいネットワーク」
町会・自治会、近隣事業所やボランティア等による社会福祉施設等との協力体制の確立を次のように推進しています。
(平成一一年七月末現在 四四四の町会・自治会と四二九の施設の間で協定が締結されています。)
・ 協力体制は、「応援協定の締結」等の文書により明確にしておく。
・ 日頃から施設等を住民に開放するなどして、相互の理解を深め、協力が得られるような土壌づくりをしておく。
・ 定期的に合同訓練等を実施する。
五 今後重点的に進める対策
(一) 区市町村、民生委員、ホームヘルパー、身体障害者相談員などの福祉関係者と連携した防火診断の推進
(二) 区市町村や福祉関係者との連携を強固にするため、地域協力体制づくり推進会議や緊急通報システム等地域安全対策会議を積極的に開催する。
(三) 福祉関係者と連携した実効性のあるネットワークをつくり出す地域協力体制づくり(ふれあいネットワーク)と検証のための防災教育訓練の推進
(四) 区市町村と連携した災害弱者の個人情報の実質的把握の促進
(五) 緊急通報システムの利用者の拡大による安全化の推進
(六) 火災安全システム及び住宅用防災機器等の普及促進による「火災による死者」の未然防止
六 終わりに
高齢社会の進行は、核家族化による扶養意識の変化や地域社会の連帯意識の希薄化などによって、高齢者だけの世帯や一人暮らしの高齢者が増加するとともに、疾病による寝たきり、加齢による体力の低下等、高齢者のおかれている環境にも深刻な影響を及ぼしています。
このような社会背景の中で、高齢者の火災による死者の発生率は、全体の五〇%を超えて来ており、救急事故についても同様に増加傾向にあります。
また、心身障害者においても、災害からの自力避難が困難なため、高齢者と同様に防災上の支援が不可欠です。
このように特に災害に弱い立場にある人々に対しては、防災上からの福祉施策が必要であり、災害の実態を十分考慮するとともに、関係機関の実施する福祉施策と一体性を保ちながら、災害弱者の視点に立った防災福祉対策を更に推進して行く必要があると考えます。
折しも、今年は国連の定めた「国際高齢者年」であり、東京都も「助け合い 支え合い 生涯青春」をテーマに掲げていますが、東京消防庁としても、高齢者等災害弱者の防災福祉対策の更なる推進を今後も図って行きます。
(関達夫)