(3) 実験結果について
「(1)泡消火薬剤の原液での攪拌」実験では、原液同士の混合による凝固物は発生しませんでした。
「(2)泡消火薬剤の原液に水を混合させて攪拌」実験では、異種の原液同士に水を混合させて、原液を一として水を一とした場合、凝固物は発生しませんでした。
また、原液を一として水を二とした場合及び原液を一として水を三とした場合
前記の三パターンで凝固物の発生を確認しました。
以上の実験結果について考察すると、メガフォームAGFがスノーラツプH、スーパーフォームの両方、あるいは何れかの薬剤と混合された後に水を投入すると凝固物が発生すると推定されます。
今回の火災において、鎮火後の化学車洗浄時に発生した凝固物は、消火で使用した薬剤(メガフォームAGF、スノーラップH、スーパーフォーム)が配管及び薬剤タンクの内面に付着し、非水溶性物質が生成し、洗浄時の多量の水の投入により析出したものと考えられます。
五 問題点について
当市の泡消火薬剤備蓄計画は、平成二年五月二一日付消防消第七八号及び平成三年六月四日付消防特第一〇八号通知に基づき合成界面泡(スノーラツプH等)から水溶性・非水溶性のどちらにも対応可能なAGFF(メガフォームAGF)に更新中でありますが、かなりの量のスノーラップH等も保有しています。
また、県・事業所においてもスノーラップH等の備蓄から、新たな備蓄としてメガフォームAGFを採用している機関も多くこれらの泡消火薬剤の使用は当面避けられない状況下にあり、各消防本部等においても同様な事案発生が懸念されます。
六 原因及び今後の対応について
原因について当市消防局及び薬剤メーカーとにより究明し、多量のスノーラップHやスーパーフォームの主成分がメガフォームAGFの一成分にイオン的に結合して非水溶性物質を生成したことが判明しました。この非水溶性物質は、水が多量に混合すると分離し凝固物となって析出します。以上のことから、薬剤使用後の水洗浄が問題となるわけです。
今後の対応については、これらの薬剤使用による消火の効果には問題がなかったことから、使用後の洗浄方法について特に対応が必要となりますが、薬剤メーカーとポンプ車メーカーで凝固防止のため水洗浄に替えて、専用の洗浄剤(非危険物)の開発を終了し、当市消防局においても、その有効性を実地検証にて確認済であります。今後緊急時に今回のような事態が発生した場合には、洗浄開始時に水を投入せずに上記洗浄剤を使用することにより対応可能であると考えられます。
本事案に係る対応等について、薬剤メーカーに対して各消防本部等に周知徹底するよう指導しています。
(塚原昌尚)