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事故は起こらない

―安全に対する基本的な認識と安全管理の具体的な進め方について―

 

日本中で毎日多くの催しが事故もなく開催されています。一つのホールで年間に何回、事故報告がなされるでしょうか。多くのホールでは、1回の事故報告もないと思います。事故はほとんど起こらない。それはなぜでしょうか。

舞台は危険だから、安全に注意して作業している。

高所など危険な場所での作業は安全補助具を使っている。

危険なことは行わないようホール管理者が規制している。

事故を起こさないためには、それぞれが注意すればよい。

だから、事故は起こらない。このように考える人が多くあります。しかし、それが安全管理でしょうか。

舞台管理を行っている舞台スタッフの多くは、職人的に仕事を覚え、安全な作業方法を経験で得ていることが多く、現代の安全思想、安全教育を受けていない人がほとんどです。より複雑化している現代の舞台技術に対して、個人の経験則だけでは、あまりにも心許ないといえます。

安全に対する基本的な考え方は、安全であるかないかという二元論ではなく、より安全な状態を作る、より安全な作業環境を作るという安全水準の向上を図ることです。

安全水準の向上を図るために行うことは、まず第一に小さな事故を減らす、小さな危険を減らすことです。小さな危険がいくつもあると常に注意をしなければならず、どうしても注意が散漫になってしまいます。それは大きな事故への第一歩です。

日々起こる小さな事故や危険について事故報告がされているでしょうか。小さな危険を回避するための安全対策は行われているでしょうか。

舞台と同じように危険な作業が多く、様々な職種の人が作業する建設業では、毎朝、朝礼時に昨日の小さな事故、危険とその対策について説明があり、誰でも見ることができるところに掲示されます。

毎日のように事故が起こる。だから、常に安全水準の向上を図る。これが、安全管理の基本です。

これまで経験した様々な事例をもとに、上演側からみた、安全管理の具体的な進め方についてお話したいと思います。

 

劇場コンサルタント 竹内一秀

 

 

 

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