講演
舞台機構のシステムと安全について
森平舞台機構(株) 専務取締役 森健輔
舞台の安全を考える視点として
舞台機構にはいろいろな方式、システムがあるが、本来のシステムの持つ危険性あるいは安全性について考え、どのような事故が想定できるか見つめてみたい。
システムを末永く安全を維持するためにはメンテナンスが必要だが、どういった点に気を配っているのか、考えていきたい。
メンテの中で消耗品が出てくるが、今回はおもにワイヤーロープと舞台の幕地について考えてみたい。それを、どういう風に扱えばいいのか、安全に運用できるのかを、吊り物と床機構についてまとめて、それがうまく運用できないとどういう事故が過去に発生したのか、事例をお話したい。
1 舞台機構の安全とは何だろう
舞台の安全は、日常生活で見られるような危険区域を知らせて行う安全工事とは違う。
様々に危険がとりまいているのが舞台である。
(1) メーカーの立場からいうと、まず、安全な設計を行うこと。
ワイヤーロープの選定(十分な強度を持ったもの)
ワイヤーロープに無理のかからないワイヤーの取り回しを行っている。
電動装置は必要にして十分な電動機を使う
制動装置は制動力が十分なものを選定する
制御盤や操作盤はJIS選定品を使用する
いろいろな電気の配管配線も法規に抵触しないように考える
設計を具体化するのだが
品質管理を徹底して物を作っていく。しかし、いろいろな変更が起きる。それに応えていく。安全な設計による納品。これで安全とメーカーは考えるわけだが。
最近はコンピュータによる制御装置。操作方法が分かりづらいために、あるいは感覚的にものが動かない状況が起こりうる。扱いにくい、危険だという感じになる。基本的にはきちんと扱ってもらえれば安全である。
(2) 舞台でシステム上、どんな事故が起こりうるのか
昭和63年1月、六本木のディスコで照明の昇降装置がダンスフロアに落下した事故
1]建設省が建築センターに委託して「懸垂物安全指針・同解説」がだされた。
・適用範囲として、劇場舞台、演出空間など、テレビスタジオは含まれていない。
・問題点として懸垂物はワイヤー1本で吊ってはいけないということ。天吊り装置は1本で吊る装置。これができなくなると困る。
・これでまずいと考え、劇場演出空間技術協会で安全指針のカバーできない部分を「吊り物機構安全指針・同解説」を改めて作成した。舞台空間で初めて出来た指針。(資料参照)
・また、改定作業中の重点事項として、平成11年10月より法的な関係では、重量として使用する「kg」の表記は「N」(ニュートン)に。照明器具の荷重に使用されると混乱が予想される。メーカーは重量ではなく質量と解釈し説明している。だから、照明器具にkgと書いてあっても今まで通りの使い方でかまわない。