また、女性の就業は、区内移動者をレファレンスとした時には、遠距離移動者と統計的に有意な負の結びつきを示し、一方、遠距離移動者を準拠カテゴリーとすると、近距離移動者と有意な正の結びつきを示している。そして近距離移動者と区内移動者の間には統計的に有意な差異はみとめられない。したがって、遠距離移動者と比較して、近距離移動者の女性および区内移動者の女性には収入のある仕事に就いている者の割合が有意に高いことがわかる。また、住宅ローンがあることは、区内移動者と比較した場合、近距離移動および遠距離移動両方と有意な負(マイナス)の結びつきを示しており、なかでも遠距離移動との負の連関は強い。一方、遠距離移動と比較した場合、近距離移動と住宅ローンがあることとの間には有意な正の連関が認められる。したがって、現在の住居が持ち家でそれに住宅ローンを払っている女性(夫婦)は区内移動者に最も高く、次いで近距離移動者、そして遠距離移動者には最も少ないことがわかる。そして、近距離移動者と遠距離移動者の間の差も統計的に有意に大きいことから、遠距離移動者には住宅を所有する者の割合がたいへん低いことが示唆される。
また、コントロール変数の影響をみると、女性の年齢は有意な影響を示していないことから、年齢による移動タイプの差異はないことがわかる。そして、転居前の親との同居は、区内移動者と比較した場合、遠距離移動者とは有意な負の連関を示す一方、遠距離移動者をレフェレンスとして近距離移動者と比較すると、必ずしも統計的に有意ではないが正の連関傾向がある。つまり、転居前に親と同居していた確率は区内移動者に最も高く、次いで近距離移動者、そして遠距離移動者に最も低い。上記の住宅ローンに関する結果を考え合わせると、転居以前には親と(おそらく親の家に)同居していたが、自分の住宅を取得することで転居した者の割合が区内移動者に最も高いことが示唆される。
次に、転居理由をモデルに加えた分析結果を見てみたい(表2-5-1の2Aと3A、2Bと3B、および2Cと3Cを参照)。この表からまず、転居理由としての「育児環境」は、区内移動をレファレンスとしてもまた遠距離移動をレファレンスとした場合も、いずれも近距離移動と有意にかつ正の結びつきを示している。
一方、区内移動者と遠距離移動者の間には有意な差異はみられない。ここから、より良い育児環境を理由に江戸川区に移入してきた女性は、とくに近距離移動者に多いことがわかる。一方、「住宅事情」を転居理由とする者の割合は、遠距離移動者と比較して、区内移動者および近距離移動者に有意に高い(表2-5-1の2Bと3Bを見る場合は、レファレンスと被説明カテゴリーを逆にすることになり、係数の±の記号を逆転させれば良い)。しかし、区内移動者と近距離移動者の間には有意な差はみとめられない。したがって、「住宅事情」を転居の理由とする傾向は、区内移動者と近距離移動者に強いことがわかる。