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なお、転居理由は2つまで選ぶことが可能であるが、クロス集計の結果、全移動者の68%が転居理由を1つしか選んでいないことがわかった。

まず表2-3-1の上のパネルから、移動タイプ別の転居理由の特徴を次のようにまとめることができる。区内移動者は、主に「住宅事情」や「生活の利便性」のために移動している。また区内移動者に、他の東京・埼玉・千葉・神奈川からの近距離移動者と比べて、転居理由に「子育て環境」を挙げた者の割合が低いのは、同区内で移動している限り、区の子育て支援サービスは同じように受けることができるため、このような移動によって、子育て環境があまり変化しないためであろうと推測される。

一方、近距離移動者には、「住宅事情」や「子育て環境」を移動の理由としている母親の割合が高い。とくに埼玉・千葉・神奈川の近県からの移入者のなかに「子育て環境」をあげた者の割合が高いのが目立つ。また、遠距離移動者の転居理由をみると、区内移動者や近距離移動者とはまったく異なったパターンを示しているのが目に付く。遠距離移動者の多くが、「配偶者(夫)の仕事」を転居理由にあげており、「自分自身の仕事」の都合とした者をあわせると、ほとんどの夫婦が仕事に関連した事情で江戸川区に移入している。

次に、表2-3-1のまん中のパネルに示されている母親が現在収入のある仕事に就いている割合(これを就業割合と呼ぶ)をみると、平均就業割合は24%と低く、とくにフルタイムで就業している者の割合はわずか10%である。ここから、子育てやしつけなど親の世話を必要とする就学前および学齢の子どもをかかえた母親が、就業して収入をえることの難しさがうかがわれる。しかし、移動タイプからみた母親の就業パターンに相当な格差があることもまた事実であり、区内移動者や他区からの移動者は、より遠距離からの移動者に比べて就業率が高く、約3人に1人の母親が収入のある仕事をしている。

一方、埼玉・千葉・神奈川の近県からの移入者には、東京都区内からの移動者に比べて非就業者割合が高く、その他の道府県からの移動者では、非就業者割合はさらにいっそう高くなっている。(なお、茨城・栃木・群馬からの移入者は総数が少ないため、表に示された数値は統計的に不安定である。)これは、同区内および東京都区内からの移動者は、転居によって就業パターンを変える必要が比較的低い一方、移動の距離が大きくなるほど、就業を一時的にせよ止める必要が高くなるためではないかと考えられる。

最後に、保育サービスヘのニーズがとくに高いと考えられる学齢前(6歳未満)の子どもをもつ母親の割合を見てみたい。表2-3-1の下のパネルに示されているように、移動タイプにかかわらず、小さな子どもをもつ者の割合は高く、約85%という高率である。ここからも、子育て支援サービスヘの潜在的需要度は高いことが示唆される。なかでも、埼玉・千葉・神奈川からの移入者に、就学前児童をもつ女性の割合が約96%と、非常に高いのが目立つ。

 

 

 

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