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傍系の彼が、まさかクーデターをするなどとは、ナワズ・シャリフは思っていなかったのでしょう。しかし、彼が決行したというのは、いずれにしても広い国民の支持を得ている。実は私のよく知っているレガーリ元大統領も、このクーデターを支持している。ですから、国民の99%が支持しているということで、これは正しいということが一つ。

それから第2点は、噂はいつも飛んでいるところで、噂があったからというのではなくて、いつも噂がある。われわれやはり公務員としては、どれがプロバビリティーが高いか探っていろいろ本社に報告するので、噂が出たからといって、はいそうですかというわけではありません。噂というのは日常茶飯事です。あそこはそういう社会ですから、噂では全く判断できない。

それからもう一つ、不良債権の問題でよく理解されていない点は、日本の不良債権問題と全く違う点です。日本の不良債権は、土地を担保にして、地価が低下してくると払えないんです。しかしパキスタンの問題は、何の担保もなしに政治家が自分の名前じゃなくて、弟の名前とか、親戚の名前で金を借りるという、まさに横領なんです。それがすごく額で、驚いたんです。自分の子供をロンドンとか、ニューヨークとか3人ぐらい留学させる。どうして、そんな金があるのか不思議に思う。とにかく国の財政を食いものにしているわけです。だから日本では想像がつかない。パキスタンの不良債権問題は、日本の不良債券問題と全く違うのです。

それからIPPプロジェクト。これは日本にも非常に関係が深い。三井物産、さくら銀行、輸出入銀行が金を貸す、ハブコというのがありまして、私もそれに出たんですが、最も大きな問題はベナジールが金をどこかからもらっていたわけです。

コミッションとして、ご主人がいつも10%コミッション男といって、何百億円の中から10%か20%、ものすごい金で、それを調査せんとして、ナワズが徹底的に調べようとして、そのために日本の会社も、ほかの銀行もものすごく影響を受けたという、非常にまずい例で、これもビジネスマンからの非常に苦情が多かったわけです。

それから、小田さんがアンダー・グラウンド経済にふれたのは非常によかった。調査団が来まして、経済統計をもとに議論をしても、結局本当の経済のことはわからない。なぜかというと、アンダー・グラウンド経済はものすごい規模だからです。アンダー・グラウンド経済はパキスタンだけでなく、インドネシアとか、それからイラン、トルコでもものすごく大きいです。

 

 

 

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