制度の趣旨から言って後者の資格要件のみで十分であり、前者は不要だ。また、独立行政法人の長を公募する場合にのみ「公正性」を求めているが、天下りの場合は「公正性」は要らないというのか。
さらに言えば、独立行政法人制度は、そもそも非公務員型を原則にして設計されたもので、公務員型は例外のはずであった。ところが法案による公務員型の「特定独立行政法人」の定義は、概念が広すぎて、ほとんどすべてがこれに該当することになり、「それ以外の独立行政法人」である非公務員型は例外的な存在になる。本末転倒である。
中央省庁のスリム化が進まないおそれがある
今回の改革では、中央省庁の局一二八を九六に、一一七〇弱の課を一〇〇〇(いずれ九〇〇)にスリム化することとしている。その一方で、政府は、総括整理職、分掌職(いわゆるスタッフ職)を活用する方針だ。これらは局長級、課長級であり、削減対象にはなっていない。これらの職を「活用する」ことになれば、局、課の削減を形骸化させるおそれがある。スタッフ職の大安売りだ。
また警察庁が「特別の機関」ということで局の削減対象から除外されているのはどういうことか。人事院でさえも一局削減を決めたと聞く。
さらに、各省の事務のナンバー2に当たる省名審議官(大蔵省の財務官や通産省の通商産業審議官に当たるポスト)が、国土交通省には四人、総務省には三人も置かれる。統合される省庁の数に見合っている。さすがに気がとがめたのか、それぞれそのうちの一人は「当分の間」置かれることとされている。だが、この「当分の間」というのがクセ者で、地方債の許可制度などは五〇年間も続いている。
命綱である「評価」が十分に機能しない…
従来、計画偏重と指摘されていた行政から、政策評価や行政評価、独立行政法人の評価など「評価」を重視する行政に重心を移したことは高く評価できる。しかし、この「評価」が機能するかどうか怪しい。
これまで総務庁の行政監察が権限や体制面で弱体といわれてきた原因の一つが、設置法に監察・調査の根拠を置いていることにあると思われるが、その反省が政府にはないようだ。残念ながら今回も評価権限は総務省設置法に根拠を求めている。これは、今回設置法に権限規定は置かないとする方針にも反し、二重の意味でおかしい。
総務省設置法では、総務大臣は政策評価、行政評価等を行い、必要があるときは、関係大臣等に勧告することができる。また、関係行政機関に「資料の提出や説明を求め、実地に調査することができる」ほか、「公私の団体その他の関係者に対し、資料の提出に関し、協力を求めることができる」。
これらは政府部内における権限行使であり国民に対するそれではないと説明されていると聞くが、上記の「公私の団体云々」の規定を見よ。さらに、特殊法人も独立行政法人も地方公共団体も、補助金を受けている私人も調査の対象とされるのだ。権限行使以外の何ものでもない。これらの権限規定は、別途「評価法」に定めるのが王道だ。
なお、評価を人事評価と結びつける考え方を採っていないが、評価の実効性を高めるために両者をリンクさせるべきと考える。民間企業では当然のことである。
ワンポイント
奇妙な所掌事務規定の例
問題は、新しい省庁に移行するに当たり、改革の趣旨に沿って所掌事務の見直しが行われているとは思えないことだ。とんでもないことを付け加えている場合さえ見受けられる。ここに示すのは、何とも奇妙な所掌事務のホンの一例である(すべて各省設置法4条)。
1]地方公共団体の人事行政に対する協力…に関すること(総務省38号。自治省の地方公共団体への天下りは「協力」だったのだ)。
2]…外国に関する政務の処理に関すること(外務省2号。「政務の処理」とはさすが行政支配の国)。
3]外国為替相場の決定…に関すること(財務省48号。相場まで行政が決めるのか)。
4]…資源の有効な利用の確保に関すること(財務省64号。他省にも同じ規定あり。行政が関与すれば資源は有効に使われるのか)。
5]…教育改革に関すること(文部科学省1号。「改革」は組織に本来的に内包されるもの)。
6]…教科書用図書の無償措置に関すること(文部科学省11号。教科書の無償措置は断固としてやめないぞ!との意思表示か)。
7]医薬品…の製造業…の発達、改善及び調整に関すること(厚生労働省16号。他の号、他省において同じ。「業」の調整をするという。民間活動への行政の支配。政府は一方で懸命に規制改革を推進中)。
8]市民農園の整備の促進に関すること(国土交通省51号。地方分権などどこ吹く風の霞が関でも代表格だ)。