そういうように、急に支持率がバンと上がりますけれども、いったん何かあるとガーンと下がってほとんど注目されなくなるというようなことです。だから、なかなか一定レベルで維持していくのは難しいし、今後、大統領選挙まであと1年ぐらいの間にダークホースが現れることもあり得る。
B マフィアの話は一言も出なかったんですが、これは非常に大きなロシア社会の要素にあるものですから、実際会われたことはありますか。
岸田 いや、マフィアはなかなか本当にお金持ちで、御馳走してもらったりしたこともあります。
確かに大きな問題で、日本企業もマフィアにかなりお金を支払わされたりしているケースもあります。私がいるころも、ある商社の人の車が爆破されたり、ある商社がつくった車のショールームに爆弾が仕掛けられたりですとか、そういったような嫌がらせも多々起きていました。日本企業だけでなくて、ロシアの政府要人や銀行家が狙われたり。いわゆる権力闘争にマフィアが使われるということもありますし、極めて大きな問題です。これについては、みんな政権の幹部は「組織犯罪撲滅」ということは声高に言うんですけれども、誰一人実行しない。誰一人実行できない。
ソ連時代からマフィアというのはいて、ソ連のときはほとんど表に出てくる存在ではなかったんですけれども、いわゆる経済自由化が進むにつれて、経済マフィアと呼ばれる連中が出てきてマネーロンダリングとかいろいろなことをする。さらに、実業界を牛耳るようにもなっている。何かもめごとがあると、マフィアが行って処理したり、もしくは暗殺されるというような事件が多々起きていて、本当に大きな病巣になっていると思います。その資金についても、ロシアマフィアというのは、ロシア国内だけではなくてアメリカでもヨーロッパでもかなりのさばってきているので、これはロシア国内だけの問題ではなく、全世界の問題です。経済的な混乱や失業でマフィアに流れるといったような若者や子供たちもたくさんいるので、これはマフィアを撲滅するというだけではなくて、経済的な面もバックアップしないとなくならない問題でしょう。
今回、あまりにも範囲を広げると大変なので、具体的に取り上げはしなかったのですが、マフィアはかなり大きな不安定要因であることは間違いありません。
マフィアはクリシャー(屋根)とも呼ばれています。マフィアの人間が日本企業やいろんなところにフラッと現れて、「屋根は必要はないか」と聞くらしいです。その屋根というのは守ってくれるということで、ブラッと現れてお金を脅し取っていく。