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ロシア側は、あくまでも平和友好協力条約という呼び方をしていて、その点に対して橋本さんは、東京宣言に基づいてということを強調しました。その東京宣言に基づいてというのは、領土問題の解決ということが明記されてはいますけれども、ロシア側としては、それをいつまでに解決するというのは言っていません。2000年までというのはあくまでも我々が言うところの平和友好協力条約。もちろん領土問題も解決できればいいけれども、実際は今の状態ではそれは不可能でしょう。それぞれ日ロ双方の当局者に聞いても、その温度差があるなといった感じがしていました。実際、2000年までの平和条約締結というのは可能なのかということについて、4島の帰属問題が解決した上での平和条約締結というのは、かなり難しい状態であると考えています。

これに対して、ロシアの知日派の人たちがどういったような考え方をしているかというのを最後に少しご紹介します。

その中で、一番よく聞くのが、56年の日ソ共同宣言に基づいた解決策。日ソ共同宣言というのは、ロシア国内でもある程度の認識はある。それで、とりあえず2島返還ということについて合意して、それでさらにほかの2島については今後の協議に委ねることで妥協しましょうということを言っているのが、改革派野党のヤブロコ代表のヤブリンスキーさんとか、ザイエフさんというIMEMOという研究機関の副所長、法政大学の客員教授をされているサルキソフさんなどがそういったような考えを持っていらっしゃいます。

それで、ロシア世論の動向はどうかといいますと、日本に4島を返還するということをロシア全国的なレベルでみると、ニエットが大半である。特に、4島を管轄しているサハリン州ではかなり強い反発があります。ただ、その4島の島民に聞くと、おそらくかなりの人は、今の放ったらかしにされているような状態であれば、日本にいったほうがいいと思っているのも確かのようです。

2000年まであと少しで、28日から高村外務大臣が訪ロしますけれども、高村訪ロの最大のポイントは、当然のことながらエリツィン大統領の訪日準備。秋に日本に行きましょうということをエリツィンは言っていますけれども、これに関して健康問題もありますし、政局がどう動くかといった状態で左右されますので、確実に日本に来るだろうと思うことはできません。エリツィン自身も、いま日ロ関係を重視するという考えはあるのですが、ただ、自分の権力の足元に火がつきかかっているのに、それを放っておいてまで日本重視というような感じではないので、今後の秋に向けての動きによって日ロ関係も後退といったことも考えられるのではないかと思います。

時間が過ぎましたけれども、ありがとうございました。

 

 

 

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