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次に、アメリカが小さな政府で成功している一方で、ヨーロッパの各国政府はどちらかというと社会主義的な政府体制をもち、大きな政府を目指しているということについてのお話がありました。この点については私も、アメリカでうまくいくものは必ずしもほかの国でうまくいくというわけではありませんので、アメリカ的なモデルは必ずしも外国にそのまま移植できるというようなものではないと思います。アメリカの歴史上、過去を踏まえたうえで、今アメリカがうまくいっているということだけなのかもしれません。それに関連していえば、経済、財政、金融の処方箋としてアメリカが出しているものがそのままアジアに適用できるかどうかは分かりません。しかし、アメリカが取り組むことによって、それが日本や中国に悪影響するということが考えられる問題があるとすれば、それは例えば非常に大きく年々膨らんでいる貿易不均衡の問題が挙げられるのではないかと思います。ただこの問題に関して我々はまだ何も策を講じていないという認識でおります。

そこでこの問題に関して、共和党および民主党のポリシーが何になるのかと聞かれますと、ポリシーはないと私は思っております。つまり両サイドにコンセンサスはないと私は思っております。米中間、日米間の数千億ドルの貿易不均衡に何も解決策はとられていません。

次に、資本主義に関していいますと、厳密な意味での資本主義というのはないのではないでしょうか。いろいろな修正がされてきて、例えばアメリカの場合、資本主義も時代によって変わってきているのです。資本主義の元来の定義からすれば、アメリカ的資本主義がそれにぴしゃり当てはまるというわけではないと思います。

一般的なことをいいますと、民主党は官僚を支持し、組合を支持し、大きな政府をよしとする党ですが、一方共和党は小さな政府と個人を尊重するというところでありますので、そのところから共和党は個人の成功に報酬をあたえ、民主党はむしろ個人の失敗に報酬を与えるというような仕組みを作ってしまっているのではないかと思います。アメリカ政治についてはそのようなことが言えると思います。例えば、ワシントンDCの地方経済がうまくいかないとします。ワシントンDCに住んでいる人の9割は民主党ですので、福祉のためのお金をどんどんかければいいと言うでしょう。結果としてより大きな失敗につながることになるでしょう。一方で共和党は、いかにしてワシントンを活性化するべきかに取り組むでしょう。政府の仕事を民間に移管したり、市の運営を民営化したり、公務員を解雇する代わりに民間の職につけるというような提案を出すでしょう。

 

 

 

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