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ですから政府に課税を許せば許すほど、我々個々人をコントロールさせることになるわけです。それによって我々がいろいろと影響力を発揮することができなくなる。また、経済の流れがどんどん政府によって規制されるようになってしまう。ですから我々は、税率を下げるように努力してまいりました。そして必ずしもいつも成功を収めていたわけではありませんが、政府の拡大を抑えようとしてきましたし、また官僚主義、あるいはまた政府の組織などを小さくしようとしてまいりました。

いずれにせよ、そういったアプローチを我々はアメリカで取ってきました。確かにビル・クリントンは相当人気が高いのですが、人気が高くて当然だと思います。彼は素晴らしい、彼のやることはなんでも許されるという報道を人々は毎日耳にするわけですから。しかし、アメリカで一番大事なのは、よく選挙の時に言うことですが、お金の要素です。つまり経済、雇用なのです。みんな仕事があれば、そして収入を上げていれば、そして景気が拡大を続けていると思えれば、大統領である人間は誰でも好きなわけです。ですから、今の経済の成功は必ずしも彼の功績ではないにもかかわらず景気が順調なので、ビル・クリントンは人気が高いのです。

少なくも我々の観点から言えば、彼は景気をだめにするような、景気を破綻させるようなことはしていないだけなのです。共和党がレーガン、ブッシュ政権の下で始めたことを逆転させるような、そして94年の革命以降進んできたようなことを逆転させるようなことはしていないということだけなのです。たとえばアラン・グリーンスパン体制を維持し、その他多くのエコノミストあるいは金融部門のトップ、フェデラル・リザーブ・システムのメンバーを維持することをやってきた。彼は共和党が任命した人々をそのまま在任させたのです。ですから、これは私自身のバイアスのかかった見方かもしれませんけれども、アメリカ国民は景気の拡大に対しても安心していることができるのです。しかし、このバイアスのかかった考えというのはあまりお聞きになることはないと思います。いつもは逆のほうのバイアスの話を聞いておられると思いますので、なんとかバランスを取っていただこうと思ってこういう話を申し上げたのです。

もう1つ申し上げるべきことですが、アメリカ以外に住んでいる方、日本の皆さまもそうだと思いますが、アメリカの政策に対する捉え方はまずホワイトハウスをみるところ、国務省をみるところ、というところから出発しているのではないでしょうか。また駐日大使のトム・フォーリーを中心に考えるのではないでしょうか。しかし、実際にはアメリカで特に冷戦が終わった今は、大統領が戦争中のような特別な権限をもっておりませんので、大統領府の力は少しずつ減ってきておりまして、一方議会のほうの力がかなり大きくなっております。

 

 

 

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