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初めIMFのプログラムが3カ国に適用された当初はほとんどソーシャル・セーフティネットに対する配慮がなかったのです。それが危機が深刻化し、非常に景気が停滞するようになって、はじめてソーシャル・セーフティネットに対する考慮が出てきています。

それから3番目は為替レートの安定化を最優先していて、金利の低下は二の次であったということです。

4番目の特徴は非常に包括的な構造改革です。通常はスタンドバイといわれる3カ国に適用された融資制度(インドネシアは後にEFF融資制度に変更していますが)が適用されています。通常、この融資制度では、構造改革はそれほど含めていないのですが、3カ国のプログラムでは包括的に含まれています。いい悪いは別にして、非常にたくさんの構造改革が入っているということです。

それから第5番目のポイントは、パフォーマンス・クライテリアが強化されています。従来のプログラムよりもはるかに強化されているということを申し述べておきたいと思います。

そこで、プログラムの効果と問題点ということで簡単に申し上げておきたいのですが、確かにIMFのプログラムが実行された結果、為替レートの安定化に寄与したと思います。その結果、金利も大幅に低下しています。むしろ危機発生前の水準よりも低い金利水準になっています。しかし、やはり所有意識の欠如とか政府によるプログラムに対する理解とかいうのが非常に乏しかった。その結果、やはり政策の実践にズレが生じて、信任の低下につながったといえると思うのです。ですから為替レートの不安定化が長期化してしまったと思います。タイと韓国の場合は1998年の2月、対インドネシアの場合は8月まで為替レートが不安定化したというのは、1つにはそういうプログラムの交渉、あるいは内容の理解が欠如していたということがいえるかと思います。

次に、金利の低下にもかかわらず貸し渋り現象が起こっているということです。IMFのプログラムをみますとやはり貸し渋り現象に対する考慮というのは非常に少ないです。それはなぜかといいますと、IMFのプログラムの根底にある考え方というのは、銀行や企業の構造改革を早急に実施することで貸し渋りの解消をしよう、それから銀行部門の経済活動を促進しようというものです。これはすごくオプティミスティックな見解だと思うのです。なぜならば銀行の改革、企業の改革というのは日本でも同じように時間がすごくかかる。それではその間の貸し渋り問題はどうなるのかということで、それに対する考慮がやはり非常に少ないと思うのです。

 

 

 

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