では、この2つの基本的な対立というのは何か。1つはもちろん人物です。要するにスハルトの後継者であるハビビという人か、それともスハルト体制と訣別する誰かかといういう対立が1つ大きくあります。2番目は改革派のイスラムか、それともどちらかというとイスラムなんてどうでもいいではないかという人たちの間の対立ですね。それから3番目に、外島かジャワかという対立で、都市、農村というのはあまり重要ではない。そういうかたちになってくる。
しかも、昨年の11月の時点でイスラムの右派が出てきたときに、イスラムの問題をとりあげるのはまずいという点で、実は合意ができています。ということはイスラムかイスラムではないかということを争点として掲げますと、これは妥協の余地のない争点なものですから、街頭で人と人とがぶつかることになりかねないので、あまりこの問題は言わないようにということで、今のところは政府と反政府の中道派のなかでは一種の暗黙の合意があるので、結局争点になっているのは人物か、ジャワか外島かというところが大きな争点として現れている。
そのうち、重要なのは実は人物だと思います。なぜかというと、ジャワか外島かというのは、これは大統領と副大統領のペアで出てきます。そうしますと、仮にハビビが大統領候補で出てくれば、当たり前のことですが彼は問違いなく副大統領にはジャワ人を指名します。仮に、メガワティかアブドラファン・ワヒッドかで、私はこの2人ではなく、むしろスルタンがこの2つのグループのいわば候補者としてどこかの時点で出てくると思っているのですが、このスルタンになればいずれにしても全部ジャワ人です。副大統領は間違いなく外島の人間が候補として出てくる。だからそういう大統領、副大統領のチケットで、ジャワか外島かという対立は、少なくとも人事のレベルではとりあえず片付きますので、そうするとイシューは人物になる。
つまり非常に単純にいうと、今度の選挙というのは、スハルト体制の継続か、それともスハルト体制との訣別か、これを実質的なレベルではすでにスハルト体制というのは崩壊しています。けれども人物のレベルで象徴的に、そういう本当の訣別の継続をよしとするのか、訣別にするのかというのが、実は選挙のうえで一番大きな争点になると思っています。