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95年、96年というのは、ご覧になっておわかりのようにしっかりと回復をしているように見えたわけですね。最近、改定になったら、何と96年は3.9%成長どころか、4.4%になってしまってめちゃくちゃな成長なんですね。確かに高い成長率なんです。これを見て、すっかり日本経済は立ち直った、これから先は財政赤字を縮小すれば、あとは日本経済は順調に、民需主導でいくという間違った判断を下したということだと思います。

なぜ間違っていたかというと、中期、長期にまだまだ問題があった。そういう中期、長期の不況要因を引きずりながらの回復であって、そんなに力強いものではないのに、平気で12兆円のデフレ・インパクトを加え、2003年までの財政政策で手足を縛ってしまった。これは大失敗です。

2番目は、中期のデフレ要因を引きずっていたというのは金融の問題で、バブル崩壊後の不良債権処理を先送りしていたために、不良債権はますます拡大し、そこから不況要因がますます深刻になってきたということです。御承知のように、バブル崩壊直後の92年には、民間は不良債権処理をしようとしたんですね。例の有名な話は、三和銀行が傘下の住専(日住金)を処理しようとした。各銀行の債権を、プロラタ方式で切り捨てようと思った。その会議を各債権銀行とやっているところに、大蔵省が圧力を加えてきてつぶしてしまった。そして、先送りしてきたわけです。これは、明らかに金融行政の大失敗であります。

最後に長期的には、追い付き型システムから転換しなければいけなかったのに、20年間……、もう70年代の中ごろにはそういう意識を持っていた。20年間、あまり手をつけないできたために、規制が強過ぎて、それが民間の自由な活動を圧迫している。

こういう中期、長期の問題を引きずった短期的回復であったのに、ものすごいむちゃな財政再建最優先政策をとったために、もう戦後日本経済で経験したことのない、急激なマイナス成長に、今、落ち込んでいるということだと思います。

この3つの短期、中期、長期の要因に対して、自自連立政権は、これまでのところ次のような手を打っております。

まず短期に対しては、本年度、98年度の1次、3次の補正予算と、99年度の当初予算で、99年度中の公共投資は、支払ベースで15.8%の伸びになります。1次の補正から0.9兆円、3次の補正からは2.3兆円、99年度へずれ込む。ですから、支払ベースでは大変高い伸びをする。旧来の、在来型の手を一つ打っております。

 

 

 

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