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さて、いま海の環境破壊がマスコミを賑せておりますが、中でも特に最近話題になった海がいくつかあります。例えは数年前ですが、干潟を閉め切るギロチンが落とされた非常にショッキングな映像が流されました。非常に大きな干潟が閉め切られて、もう潮が来なくなってしまった諌早湾……。

そして、これは自然保護派としてはなかなか画期的な出来事ですが、名古屋市がゴミを処分するための埋立地を干潟に計画していたのが、白紙撤回されたという藤前干潟です。一方、相変わらず開発が続けられているところでは、福岡県の和白干潟というところがあります。これは博多湾の奥にある非常にいい干潟だったのですが、そこに大きな人工島をつくってしまうという計画です。これは計画どおり事業がどんどん進んでいるという状況です。

そして以前この海事講演会でも、地元船橋市の漁師さんである大野さんがお話をされましたが、東京湾の一番奥、三番瀬干潟を埋め立てようとする計画が縮小されましてこれからどうなるか。そういうところが、この東京湾にもまさに最前線の問題としてあります。

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さて、干潟が大事だよとわれわれは言っていますが、かつては東京湾の中の当たり前の環境でした。これは明治41年の東京湾の様子です。この黒く塗ったところが干潟です。海には大潮、小潮とありまして、大潮というのは潮がよく引くときですが、その一番海の水が引いたときにはこれだけの面積の干潟が明治期にはあった。東京湾ぐるり一面が、こういう干潟に囲まれていたのです。

それが埋め立てがずっと相次いで、現在残された干潟は一番奥の三番瀬、千葉県木更津の前、盤洲というところ、そして東京の葛西にある三枚洲、大きなところではこの3カ所しか残っておりません。

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干潟が大事だと言っているが、具体的には何が大事なのか。そんなことをイラストにしたものです。まず海には、われわれ陸で生活している人間たちのいろいろな排泄物をはじめ、生活排水などが流されてきてしまいます。そういったものが川を通じて干潟に入ってくる。干潟というのは海と陸の境界ですから、陸から来るし、汚れた海では沖のほうからも海自体の汚れが来るわけです。

こういった陸から沖からのいろいろな汚れ分を、小さいものではバクテリア、目に見えるものではゴカイやアサリ、カニたちが食べてくれて、環境を浄化してくれています。そしてこれら小動物を食べに、空から鳥たちがやってきて餌を取る。そういったことで環境浄化がなされてきます。

 

 

 

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