はじめに
エイジング総合研究センターと名称するように、当センターの関係者は、我が国の人口高齢化とそれに伴う社会的対応について多大な関心を抱いているが、その中で特に私は高齢化と福祉財政すなわち国民の負担の在り方について大きな関心を持ってその推移を見詰めている。たまたま私は、福祉元年と称された時代に財政当局に在り、福祉の重要性を知るとともに、福祉財政の持つ特性、あるいは人口の高齢化を考えると、福祉財政すなわち国民の負担が耐えがたい時代が来るのではないかとの懸念もあったからである。そしてその後、部分的な制度の改正等は行われたものの、今や周知のように福祉財政は極めて厳しい状況に立ち到っている。
また、こうした高齢化や福祉財政について考える時、今日我が国が採用している高齢者福祉関連の施策や制度の多くは、イギリス、スウェーデン等高齢化先進国の例を参考にしている。したがって、高齢化先進諸国の福祉財政状況は、我が国に照して、どのように変わり、改革等が行われているのかは大きな関心事である。
このような観点から、我が国の福祉財政の状況を考えるため、当センターは「高齢化先進国の福祉財政の研究」を行うこととし、一橋大学経済研究所・高山憲之教授を中心に、各国事例のとりまとめや研究討論をこの約三年行ってきた。この間、「すべての世代のための社会をめざして」をスローガンとする国際高齢者年1999年もあり、高齢者福祉に関する社会的視点も高齢社会の実情に則した変化を見せているようである。
ここにとりまとめる報告書には、これまでの研究会で発表された高山教授の論文、並びに、この三年間に、最も具体的な年金改革(2001年実施)を行ったスウェーデンの財政政策について、多田葉子・同志社大学講師にまとめていただいたものを上梓している。スウェーデンの福祉財政については、多田葉子講師の恩師でもあるグンナ・エディバルク・ルンド大学教授のお話も研究会で伺ったが、国際高齢者年のスローガンがスウェーデンの年金改革のコンセンサスづくりとの関連も窺われて興味深いものである。
高山憲之教授はもとより多田葉子講師をはじめ国内外の専門家各位にはこの三年いろいろとご尽力を賜りましたことに感謝申し上げるとともに、この研究プログラムに助成して下された日本財団に厚くお礼申し上げる次第です。
2000年3月
社団法人
エイジング総合研究センター
理事長 ?敲戸コ