SERPSに代わる新しい公的年金は「国家二次年金(State Second Pension: SSP)」と呼ばれ、SERPSと同じように年収が£3,328〜£9,000の低所得者層が対象となる。ステークホールダー年金は年収が£9,000〜£18,000の中間所得層を対象とした民間年金で、国民保険のリベートというメリットをつけることで、SERPSおよびSSPからこの年金へのオプトアウトを勧めていく方針が立てられている。これら2つの公的年金とステークホールダー年金、さらに職域年金、個人年金などを組み合わせることで、すべての所得層が一定所得を確保できるようにすることがねらわれている。
上記法案の中ではさらに、仕事をもたない母親や親族の介護をしている人など、課税所得のない人も保険料を拠出し、年金支給を受ける道が開かれた。また、収入面での女性の立場を改善するために、離婚したカップルが年金を共有できるようにしたり、寡婦(夫)年金の現代化を図るといった措置も盛り込まれている。
また、政府は年金生活者が受けられる所得補助の最低保障額を、単身者で£75/週、カップル£116.6/週とすることも約束している41)。
5) 地方自治体改革とベストバリュー
地方自治体の改革案は1999年白書「地方自治体の現代化」の中に盛り込まれているが、なかでもとくに「ベストバリュー(Best Value:BV)」方式の導入と「議会運営の現代化」が重要な意味をもっている42)。
●競争入札からベストバリューへ
1999年の地方政府法(Local Government Act)によって「強制入札制度(Compulsory Competitive Tendering:通称CCT)」が廃止され、代って「ベストバリュー」の実現が地方自治体の新しい義務となった。BVの施行は2000年の4月1日からで、年間予算が50万ポンドを超えるすべての地方自治体(教区も含む)に適用される。
BVの目的は、各自治体の公共サービスが明確な目標基準(質およびコスト両面)のもとに企画され、それがもっとも効果的、効率的な方法で提供されるようにすることにある。従来の入札制度では「安さ」と「外部からの購入」ということが最優先されたのに対し、BVではサービス提供主体が誰かにはこだわらず、利用者(市民)にとってベストなサービスの追求が目的となる。そのために自治体は国が設定する全国基準も参考にしながら、市民や利用者との協議を通して地域としての達成目標を設定し、その達成度合いを評価しながら、サービス改善を「継続的に追求」することが求められている。