●介護者への支援
介護者への支援の提供は、すでに1990年「国民保健サービスおよびコミュニティケア法」および1995年の介護者法(Carers Act)でその重要性が強調されていたが、1998年白書の中でも改めて言及され、具体的な施策も導入されている。まず、1999年2月に「介護者戦略」が公表され38)、同年3月には上でも触れた自立推進補助金の1つとして、1億4千万ポンドの「介護者支援」補助金が用意された。その目的は介護者に休息の機会を提供することにあるが、それを単なる施設への短期入所という形だけでなく、日中や夕方、あるいは週末での対応、さらにその内容もレジャーや成人教育、社会活動への参加など、さまざまな形の休息プログラムを開発し、介護者のニーズに柔軟に対応することがねらいとされている。すべての地方自治体は1999年10月までに「介護者支援プラン」の作成を済ませている。
また、2000年1月末に「介護者および障害者児童法案(Carers and Disabled Children Bill)」が国会に提出された。この法案が成立すれば、介護者は本人の権利として、自治体から介護ニーズのアセスメントが受けられるようになる39)。現在の制度では、介護している人が自治体の要介護アセスメントを受けた場合にだけ、介護者は自分のニーズ判定を受けることができる。すなわち、介護を受けている人がアセスメントを拒否すると本人はニーズ判定が受けられないわけである。この法案ではまた、介護者にホームヘルプを派遣したり、必要経費としての旅費や携帯電話代などを支払う権限を地方自治体に与えており、自治体では現金給付という形での介護者支援もできるようになる。
4) 社会保障(現金給付)
社会保障関連の改革案は1998年に出された政府緑書で原案が提示され40)、広いコンサルテーションを経た後の1999年2月に、「福祉改革および年金法案(Welfare Reform and Pension Bill)」として国会に提出されている。政府はまず緑書の中で、国と民間が6:4の割合で負担する年金財源の比率構成を、今後4:6に逆転させる考えを明らかにしている。そして、つぎのような年金改革案が示されている:
※現在の基礎年金はそのまま維持し、これによってミニマムレベルの収入を確保する。
※現在の国家収入関連年金(SERPS)に代わり、新しい公的年金を2002年からスタートさせる
※さらに「ステークホールダー年金(Stakeholder Pension)を2001年4月から導入し、職域年金および個人年金は現状のままを維持する