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世代間交流では、授業についていけない子供たちへの支援提供が行われている。これも専門スタッフと研修を受けた約30人のボランティアによるチームが担当し、学校あるいは家庭に出向いて1対1による指導が行われている。

これらの他、ランチクラブ、立ち寄りセンター、社会クラブなどの運営、さらに各種情報の提供、アドバイスなどが自主財源から提供されている。また、高齢者(55歳以上)を対象とした保険斡旋サービス(家財、自動車、障害、旅行、ペットなど)も行っており、これからのコミッションがWACへの収入源にもなっている。さらに、中古品を販売する店舗が6店あり、その売り上げも貴重な自主財源である。WACの1998年度の収益は65万ポンド(約1億2千万円)で、内訳は国や自治体からの補助金が1/2、店舗売り上げが約3割、寄付収益が1割である。

このように、WACの活動の中で国や県、市町村などとのサービス契約の占める部分が大きくなっている。WACのシュリダン副所長は、「公共セクターとの契約関係は今後ますます増えていくと思う。プロの組織としての能力を高めて行かなければならない」と話していた。もちろん、NPOとしての原点であるアマチュアリズムを見失うと市民の関心が遠退く可能性があり、ボランティアとの関係づくりへの配慮も必要になる。シェリダン副所長はさらに、「県の社会福祉課が今後さらにコーディネーターの役割に徹するようになると、現場で活動する私達のようなNPOがセーフティネットとしての役割を果たさなければならなくなる」とも述べていた。つまり、介護ニーズを掘り起こしたり、健康状態をチェックしたり、高齢者が国の給付を受ける権利を見逃していないかを確認したりなど、かつてはソーシャルワーカーがやっていたような仕事をNPOが担っていくようになるというわけである。

もう一つ注目したいのが、WACの活動を支える265人のボランティアである。表26には活動分野毎のボランティア数を上げているが、カウンセリングのような難しい役割を担うボランティアもいる。シェリダン副所長も「ボランティアの力がなければWACの活動は成り立たない。ボランティアをどう確保するかが大きなテーマ」と語っている。ボランティアの採用では、独り暮しの多い高齢者相手のボランティアだけに、安心して任せられる人柄と研修が必要になる。同時に、ボランティアの希望を満たし、魅力ある機会が提供できないとボランティアは集まらない。WACではボランティアへの希望者からまず2人の推薦状を提出してもらい、その後で面接を行っている。面接では本人がどういう仕事を希望するかを確認し、それに合わせて研修の場を提供するようにしている。

 

 

 

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