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第3部 高齢者対策と市民セクター〔NPO〕の活動

 

1) 英国のNPO

英国での高齢者対策で見逃してはならないのが市民セクター〔NPO〕の役割である。英国ではNPOという表現はあまり使われず、ボランタリーセクターあるいはチャリティセクターと呼ばれている(ここではNPOと表現する)。NPOの福祉分野での関わりには数世紀の伝統があり、最近の民営化の流れの中で、その役割と活動分野はさらに広がりつつある。NPOの中には高い専門能力をもった団体も少なくなく、地域での問題の発見、ニーズへの速やかな対応、新しいケアモデルの実験、公共サービスのチェックなどの他、一般市民への社会参加機会や雇用機会の提供、社会的人材の育成など、市民社会を維持・向上させていく上で欠かせない役割を果たしている。

英国ではNPOのうち、その公益性をもって税の優遇などを受けて活動している団体を「チャリティ団体」と呼んでいる。英国には現在約18万7千のチャリティ団体があり、毎年約9,000団体が新設(約7000団体が登録抹消)されている。チャリティセクターには約48万5千人の有給スタッフが雇用されており、これは英国の就業人口の2.2%に相当する。チャリティセクターの年収を総計すると約1億3千万ポンド(約2兆3千億円)となるが、保有する資産額はさらに大きくなり、セクター全体で約4億ポンドという膨大な額となる。国民統計局の推計によると、チャリティセクターは英国GDPの0.67%に貢献しているとしている。ただし、これには約300万人以上いるとされるボランティアの貢献度が含まれておらず、その付加価値分を含めるとGDPの1.89%への貢献になるとしている21)

英国でのトップ500チャリティ団体のうち、社会福祉分野で活動する団体の年間予算を分野別に合計したのが表24である。1996年度には約16億ポンド(約3,000億円)が社会福祉分野で使われており、うち1億ポンド強が高齢者福祉に直接投入されている。このリストには含まれていない教育やレクレーション分野なども加えると、チャリティ団体が高齢者福祉面でおよぼす影響力は非常に大きなものになる。また、英国では公的機関がボランティア活動に関わりをもつことは少なく、一般市民は多彩なチャリティ団体の中から価値観や好みに応じて選択し、ボランタリー活動に参加するという形をとる。

 

 

 

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