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4 在宅要介護高齢者ケアの実態

 

フランスで要介護者に対してどの程度の介護が行われているかは、正確に測ることは難しい。高齢者が家族と生活する場合には、家庭の中での助け合いが自然に行われるため、どの段階から介護と呼ぶかは曖昧となる。また高齢者のために掃除をしたり買い物をしたりする家事ヘルパーの仕事を、介護と呼んでよいのかも問題となる。

ここでは、在宅維持要介護高齢者を対象としてアンケート調査を行った国立統計経済研究所(INSEE)の調査報告(1996年)のデータを紹介する。これは要介護者ないし近親者が、「介護」として報告した援助の時間や内容などまもとにした統計である。ここでは行政やサービス提供組織が派遣するプロ・ヘルパーによる介護サービス(有料ないし無料)のほか、家族や近所の人などヘルパーを職業としない非プロ(報酬が支払われているケースも含む)による介護援助も対象としている。

 

〔援助時間〕

高齢者が受ける介護援助のボリュームは、必ずしも要介護度が高いほど多くなるわけではなく、個人差の方が大きい。しかし全体としては、要介護高齢者の自立度が介護時間に深く関係していることだけは確かである。重度障害の高齢者(ベッドないしイスから自分では動けない、入浴・洗面・衣服の着脱に援助が必要な者)の場合は、55%が1日に3時間以上の援助を受けている。その他の日常生活で援助を受けている高齢者の場合には、1日に3時間以上の援助を受けているのは平均21%に過ぎない。

しかし重度障害高齢者の20%は、1日に1時間未満の援助しか受けていない。要介護者が必要とする援助のボリュームと内容は、その人の生活環境などにも関係するため、統計では図りにくいことも考慮しなければならないだろう。また必要な援助も、医療ケア、日常生活のための援助、話し相手、付き添いなど、多様である。高齢者が生活しやすい住居に住んでいるか否かも関係する。さらに自立度が同じレベルでも、常時待機する援助者を望む高齢者もいるし、時々援助してもらうだけで満足する高齢者もいる。さらに子どもが親の世話をする場合には、必要以上に時間を割くこともできるが、外部の者に援助してもらう場合には最低限の援助しか受けられないことになる。

従って自立度の次に援助のボリュームに関係してくるのは、高齢者の世帯構成である。援助の時間が長いには、子どもと生活している高齢者(子どもが未だ独立していないケースなど)であり、次に位置するのは子ども以外の親族と生活する者である。

 

 

 

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