その後のフランスの高齢化のスピードは、他の先進諸国に比べて緩やかであった。しかし近年では出生数の減少と平均寿命の延長によって、総人口に占める20歳未満人口の割合が減少し、高齢人口の割合が増加している【図表7参照】。
乳幼児死亡率の低下に加えて1960年代半ばからは高年齢層の死亡率の低下が顕著である。フランス人の平均寿命は、1950年には男性63.4歳、女性69.2歳であったが、1985年には男性71.3歳、女性79.4歳となり、今日では男性74.6歳、女性82.2歳となっている(1998年)。
フランスの平均寿命は将来もさらに長くなり、2020年には男性78歳、女性86.6歳となり、2040年には男性80.9歳、女性89.2歳になると推測されている。出生率が低下したベビーブーム世代が高齢に達する時期には、フランスの人口高齢化に拍車がかかることが深刻な問題としてクローズアップされている。
1998年から2020年にかけては、フランス本土の総人口が毎年0.35%増加するのに対して、65歳以上人口は毎年平均1.6%増加すると予測されている。総人口に占める高齢人口の割合は、現在でも60歳以上人口が20.4%、65歳以上人口が15.8%であるが(1999年)、2020年には60歳以上人口は26.6%、65歳以上人口は20.6%となると予測されている。
しかし2010年までは、人口が少ない年齢層が高齢となるために高齢人口の増減はあまりなく、むしろ65歳-69歳の人口は減少する。2010年から2020年になると、ベビーブーム世代が高齢者となるために前期高齢人口が急増する。2020年にはベビーブーム世代が75歳に達し、フランスの人口の高齢社会構造は著しくなる。特に2030年から2050年にかけて人口の高齢化は著しいが、この時期の高齢者人口は、後期高齢者となるベビーブーム世代と、前期高齢者となる人口が少ない1970年代世代から構成されることになる。
フランスの出産率が将来はさらに下がって、欧州連合諸国の合計特殊出生率の平均に近づくことがあるかも知れない。2050年の人口構成予測は、合計特殊出生率を1.5とした場合には、60歳以上人口38.7%、65歳以上人口32.1%、75歳以上人口19.7%、85歳以上人口7.9%となる。