上海市の人口高齢化の主なる原因は、出生率と死亡率が低下したことと、1957年から実施してきた農村から都市部への移動人口を制限している戸籍制度にあるが、高齢化に最も大きい影響を与えているのは出生率の低下である。
上海市は長い間中国の計画出産・計画生育のモデル地区であり、また、一人っ子政策実施以前からすでに少産化は進んでいた。革命後の1950年代は、上海市の出生率は高い水準にあった。表8に示すように、1951年と1955年の合計特殊出生率(TFR)は5以上であった。1960年代から公衆衛生、母子保健そして計画出産等の運動が推進されるとともに、市民の生活スタイルは変化し、市民意識も急速に少子化志向が高まることとなった。1970年代の前半に上海市の出生率はすでに「人口置換水準」を下回ることとなったが、1975年以降さらに下がり続け、80年代にかけてTFRは平均1.3以下で推移している。そして90年代に入ると、それが1を割る状況となり、1998年には0.86と史上最低を記録した。そして、1993年からは人口の自然増加率がマイナスの状況を示すに到っている。