日本財団 図書館


これは私の財産である。親が望む生徒の受け皿にもなれて、教員にノウハウも提供できるのは、こうした地域の市民団体に他ならないと実感している。

 

活動の受け皿として必要な「地域の力」

 

実際に、学校と地域の草の根団体が協力し合って活動を行う例は全国に広がりつつある。東京で私が訪ねた先で挙げれば、青梅市では、市社会福祉協議会が仲介役となって、学校の要請に基づき、ボランティアグループを学校へ派遣する、いわば「出前」を実施している。昨年七月に、市内のある中学校を見学したが、手話・点字・車イスの介助など、さまざまなボランティアグループが指導に当たっていた。

青梅市社会福祉協議会ボランティア担当の高瀬由直さんは「このような試みは、ボランティアグループにとっても活動の使命を再確認する、良い機会」とその相乗効果を指摘する。同社協ではさらに、市の教育委員会を通じて体験学習の導入を校長会に働きかけてもいる。先生方へのアンケートや手引き書の作成、教員向けの講習会などの実施もめざす。「大人が考えている以上に子供の受け止め方は強い。結果はすぐに出ないが、子供が体験し、考える機会をつくってあげてほしい」と高瀬さんは語る。

一方、地域の中学生と一緒に近隣の特別養護老人ホーム「なぎさ和楽苑」を訪間しているのが江戸川区の「たんぽぽ」というボランティアグループ。同苑には、以前、年に二回程度、近隣の中学校が施設訪間を行っていたが、「たんぽぽ」が喫茶ボランティアを実施するにあたり、中学生と一緒に活動することにした。「今、地域には中学生を受け入れる受け皿がない。ならば自分のところで」とリーダーの清水幸子さんたちが動いた。「こうした活動は学校だけでは無理。ボランティアがボランティアを育てることも必要。中学生を受け入れる地域の団体が各地に増えることを望みます。」と清水さんは語る。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION