それが彼の若さの秘訣でもあるのだろう。もちろん、審判をするようになってから、利害関係のない友人、知人が増えたことも、お金には換えられない大きな財産。それは家で仕事をしていただけでは、絶対に生まれなかった人の輪でもあるからだ。
そして彼は、審判道についてもまだまだ貪欲。これまで、自分でほぼ納得のいく判定ができたのはただの一度。九六年、第七八回大会の早稲田実業と海星の対戦だけという。
「スピーディな試合展開に導くことも審判の大切な仕事なんですが、それまでは、試合を引っ張って行くような前向きな面が出ていないと先輩たちから指摘され続けていたんです。性格的にも弱いものがあって、たとえば、選手たちの緊張を思うと必要以上に間延びしててもキャッチャーの子によう言えんかったり」
そんな山名さんに今後の目標を伺うと、
「誰が見ても百点満点、自分でも百点を付けられるような試合を一度でいいからやってみたいですね」と、即座に返事がかえってきた。
山名さんはもしかしたらこの二一年、「ボランティアをしている」という意識など一度も持ったことがないのかもしれない。「してあげるもの」とか「するべきもの」といった窮屈な理屈なんか飛び越えて、ただ、「やりたいからやる」。それほど、取り組む姿が自然体なのである。それが社会の、そして自分の活力にもなっている。できること、好きなことをまず体験ありきではじめてみれば、余計な気負いもなく、自分なりの活動が見つけられるものなのだと思う。来年の高校野球中継、またひとつ、楽しみができた。