というのも、この辺りでは、「お年寄りの面倒は嫁や家族が見るのが当然」という昔ながらの考え方を持つ人がまだまだ多く、他人を家の中に入れることに対する拒絶反応が強い。実際、丹さんも近所の一人暮らしのお年寄りが困っているのを見かねて、手伝おうとしたこともあったが、「お節介は止めておきなさい」と、周囲から諭されることが多かったという。そんな状況では、とても団体を設立しても活動を継続していけない。心のどこかで、そうあきらめていたからだ。
何かをしなければという思いと、何ができるのだろうという現実との間で、迷える日々を過ごしていた丹さんだったが、九四年八月に、さわやか福祉財団主催のリーダー研修会に参加。これが一つのきっかけとなって、行動を開始。仲間づくりのために一度受講したことのある市の介護講座を再び受講して、同じ思いを持つ五人の仲間を得て、会の設立に向けて走りはじめた。
「研修会に参加して驚いたのは、同じ志を持つ人たちが、全国にこんなにたくさんいるんだということ。そして、みなさんの熱気に当てられ、励まされたことで、機が熟したとでもいうのでしょうか。“団体を設立したい”という思いが抑えられなくなったんです。もしかしたら失敗するかもしれないけれど、このまま何もやらずにいたら、きっと後悔すると思い、覚悟を決めたんです」