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堀田 住宅の改造にしても高齢者施設にしても、当事者の方、介護する方、双方ができる限り快適な空間をつくれるような補助をもっと柔軟に出してあげることですね。単に豪華な建物を建設するというようなお金の出し方では従来と何も変わりませんから、質に重点を置いた形ですね。

日野原 そうそう。それと日本はハード、つまり建物にはお金は出すけれども人間は付けない、それがまた問題なんですね。良いケアの質を保つには人手を要します。一番の基本は人なんです。外国に負けないようにと地方都市のあちこちに立派な文化ホールがあるのはいいけれども、でも外国にはそんなところないですよ。行政にはもつとQOLが高くなるようなお金の配分、使い方を考えてもらわないと困るんですよ。

堀田 おっしゃるとおりです。

日野原 日本の国防費はアメリカやロシアに比べるとはるかに低いでしょう。軍備をやらない代わりに、教育をする。自分の健康は自分でやるんだという自覚を持たせて実行できるような体制をつくることが絶対に必要です。日本では今九八%が高校を出ていますが、これはものすごく強力なバックグラウンドになりますね。発想をちょっと変えるだけでね、教育が革命を起こすんです。日本でも外国のように、住民の生活を健康にするための専門家をつくって、ヘルスエジュケーションを進めていく。

堀田 医者でも看護婦でもなくて健康を教えることの専門家ですね。アメリカでは法律は素人だけれども、裁判所の事務部門のトップにそうした専門家が就いていたり、いろいろな分野で、教える、管理するといった専門家が活躍していますから。

日野原 とにかく日本は何でも縦割りでしょう。看護と介護の境界だって、明確には分けられないし、医者と看護婦だってそうなんですよ。それなのに医療だ、看護だ、これは介護だとか言い過ぎてるんです。

 

 

 

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