また上田市、丸子町など八市町村は一九九八年四月、上田地域広域連合を結成。認定調査と介護認定審査会を一本化することにしている。このうち長門町、武石村、和田村の三町村は一つの保険者に統一をめざしている。このように長野県の一二〇市町村は、いずれも県内一〇圏域の一部事務組合あるいは広域連合に参加する形で介護保険を実施するのである。
これらをバックアップするのが長野県市町村情報化推進研究会。県内八〇市町村が参加するネットワークだ。昨年、介護保険専門委員会(委員長・佐々木茂夫佐久市高齢者対策課長)を設け、介護保険事務をスムーズに処理するための住民情報ソフトを地元企業と共同開発した。開発コストを節減するためである。現在、佐久市など四市町がモデル自治体となり実用化のためのテストを行っている。このように長野県では市町村、広域圏、県と、それぞれのレベルで共同化する部分と個別にする部分を分担するかっこうで来年四月一日に備えているわけだ。
「施設」か「在宅」か?
ただ、同じ圏域内でも福祉基盤の整備状況や財政の台所事情は異なっている。首長の介護保険に対する受け止め方は微妙に異なり、取り組み姿勢にも温度差がある。佐久圏域のリーダー格である佐久市と他の市町村にも差異が目に付いた。
佐久市の三浦大介市長は医師の資格を持ち厚生省幹部を務めた医療・福祉行政プロ。一九八九年、郷里の市長になって以来、五三にも及ぶ高齢者対策事業を市の施策として実施してきた。そのうち介護保険の給付対象になるのは三分の一。多くの市町村は介護保険の実施を機に独自に取り組んできた福祉事業を廃止すると予想されているだけに、気になるところだが、三浦市長は「介護保険が実施されても、すべて継続します」と公約した。この点について隣のある町で方針を尋ねてみると、担当課長は「従来の高齢者対策事業を維持するためには一般会計から補填をしなければならないが、財源手当ての見通しが立ちません」と困惑する。