高齢者介護で最大の問題の一つは痴呆の判定だが、圏域内にいる精神科医一〇数人の中で痴呆判定をできる医師は二、三人しかいない。「痴呆の要介護認定を単独でできる自治体は佐久市だけ」(佐久市高齢者対策課)。また「市町村によって要介護認定の判定にバラつきが出る恐れがある」(同課)。そこで一六市町村の介護認定審査会を一本化することによって介護認定を正確かつスムーズに実施することになったのである。
圏域の介護保険対策室は佐久市役所の隣の佐久消防署内にあり、毎月一度、一六市町村の担当者を集めて連絡会を開いている。中でも力を入れているのは調査員の「グループスライド検討」。一人の高齢者の要介護度を、所属市町村も専門職種も異なる認定調査員が三人ずつのグループを作り、各調査員が個別に一人の高齢者について日常生活の動作や心身の状態など六五の調査項目をチェックして、要介護度を判断する。その上で三人の判断を突き合わせて検討しグループとしての要介護度を出す作業である。
このようにして一〇月からはじまる要介護認定の本番までには「どこの市町村の調査員が調査しても同じ視点で判断できるようにする」(神津公子室長)。
調査員の数は保健婦三一人、看護婦二五人など合わせて一一〇人程度になりそう。八月から要介護認定審査会を立ち上げ、調査員は実際に高齢者の訪問調査に回りはじめた。この際、収集する一次判定データは調査員の携帯端末器に入力し、お年寄りの住む市町村と広域連合の双方に蓄積され、ISDN回線でやりとりする。そのためのシステムは開発済みだ。このように要介護認定のための手法と情報共有化の準備は着々と進んでいる。保険料の統一化は今後の課題だ。
保険業務すべての広域化も
県内には保険料も含めて介護保険に関する業務を一体運営する圏域もある。白馬、後立山連峰の東麓に広がる大町市など一市一町五村からなる北アルプス広域行政組合だ。茅野市を中心とする諏訪広域行政組合は今年三月規約を改正し、介護認定審査会を広域化するが、「二〇〇三年度をめどに介護保険業務の全般の広域化をめざしている」(長野県介護保険室)。