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現に特別養護老人ホームに入りたくても、三年とか五年とか待たなければならない。これはどうしてくれるんだという声もあります。だが、要求通り施設を増やしたら施設過剰になってしまう。いったん過剰になった施設はつぶせない。実は特養に入らなくても本当は在宅でやっていける人たちが、施設に入っていてベッドを占拠している面もあるんですよ。

結局、日本人の頭の中には、要介護老人はまず施設や病院に入れちゃうという考えが定着しています、もっと言いますと、早く申し込んでおかなくては人れないらしいよ、と取りあえず申し込んでいる人もいるらしいのです。

 

社会的入院だけでなく社会的入所というのもあるんですね。

 

私は介護保険によってサービス過剰やサービスの押し売りが出ることを心配しています。医療では薬漬けとか検査漬けなどがあって、その分医療費が多くなるんですがおのずと限度があります。医療は注射をしたり、体を切ったりして、苦しみが伴う「苦痛サービス」ですからむちゃくちゃ増えるものではないからです。ところが介護は「快適サービス」だから無限にニーズが広がり、無限にサービス供給が増える危険性があるんですよ。

日本人は欧米人に比べて、自立心が弱いから体が不自由になっていても、自分で生きていこうという気持ちがない。むしろ甘えてサービスを受けたがり、福祉も「かわいそう、かわいそう」と手を差し伸べる形になりがちでした。福祉の従事者も、それが福祉だと思っているようです。

ですから「要介護度1」だと認定されたりすると、サービスが少ないと不満を持つかもしれません。しかし「あなたにとって必要なサービスは、これだけ。

 

 

 

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