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会長は笑いながら、「ただまあ、郵便ポストはこさえてもらわないかんわ。生活道路も整備してほしい」。これからの交渉が大事だと言う。ここでは仮設の暮らしの経験が十分に生かされている。

 

●神戸市では●

神戸市によると、震災により普段からの地域のつながりの大切さを痛感、これに重点を置いた施策を取っているという。同市では震災以前(八五年)から「ふれあいのまちづくり事業」を推進してきた。これは、地域の自治体、婦人会、老人会等地域組織の複合で「ふれあいのまちづくり協議会」をつくり、行政が建設した地域福祉センターを拠点として給食や友愛訪問など地域での助け合いや交流活動を行うというもの。九九年六月時点で小学校区一七二のうち一四一の学区に一五四の協議会ができている。行政は地域福祉センターの建設による場所の提供と委託料(光熱費、活動費の一部、ボランティア等の人件費として使用)の交付、研修などを行うが、プログラムについては個々の「協議会」が計画し活動する。活動についての直接的な援助は区社会福祉協議会が行っており、市は社会福祉協議会の後方から支援する形だ。

さらに神戸市は震災の教訓から、これに防災の役目を加え「防災福祉コミュニティ」としても機能させる方針を打ち出している。現時点で九〇の「防災福祉コミュニティ」が生まれ、防災機材の配布、訓練、リーダーの研修等を受けているという。二〇〇一年までに「ふれあいのまちづくり協議会」、二〇〇三年までに「防災福祉コミュニティ」を全小学校区で機能させることを目標としている。

活発になった市民活動に対しては、九八年度より「市民活動支援課」を新たに設置し支援している。援助内容は活動拠点の提供や研修のほか、地域の市民団体を支援する中間支援団体に対して援助を行うことで間接的に活動をサポートする支援方針で臨んでいる。

 

●住宅の状況●

兵庫県では震災後、復興三か年計画を立てて住宅の復興に尽力、現在までに数的には需要の一〇〇パーセントに達しており、ほとんどの仮設住宅入居者は転居先が決まっているという。個々の事情で転居先が未定の世帯はおよそ二七〇戸。県は入居先未定世帯について、民間賃貸への家賃補助や、公的借り上げなどの制度を使って転居先をあっせんしていく方針。

 

ふれあいの後で

 

梅雨の中を人々と会い続け、それぞれの人生が大震災で大きく変わったのを聞いた。

JR灘駅の南に広がる東神戸の副都心として、新しく誕生しつつある町、HAT(ハット)神戸は公団住宅、県営住宅、市営住宅とさまざまな恒久住宅が立ち並ぶ。仮設住宅で自治会長を務めた木戸さんは県の二〇年借り上げ公団住宅に入居したが、震災前、建築業に従事していた時には自治会長を引き受けるなど考えられなかった。

 

 

 

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