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厚生省はようやく平成十一年度予算で『在宅高齢者保険福祉推進支援事業』として一〇〇億円を予算化しました。これは市区町村が高齢者に対し介護保険の対象とならない配食や移送、寝具の洗濯などのサービスを行った場合、国が事業費の二分の一、都道府県が四分の一を補助する事業ですが、とても充分な金額、対策とは思えません。私は少なくても一〇〇〇億円単位の予算が必要だと推測します。介護保険の実施により国・地方自治体の負担は約四〇〇〇億円軽減されます。この四〇〇〇億円を活用して、介護保険の保険者でもある市区町村が地域の実情に合ったきめ細かい配慮のできる高齢者福祉施策に取り組めるよう、地方分権を尊重した高齢者福祉制度を新たに創造することが重要です。

これまで日本の高齢者福祉は、欧米の施策をツマミ食い的に模倣し、裁量行政と拡大解釈で対応してきましたが、それも限界に達し介護保険の創設に至ったのが今日の姿です。高齢化率の非常に高い過疎地や地域社会、隣人の支援が期待できない都市部、厳寒地域や豪雪地帯など、全国一律の施策ではなく地域の実情に合った高齢者福祉施策が補完されなければ介護保険は機能しないのです。

介護保険は市区町村を保険者とした地域型保険です。高齢者福祉制度も当然、地域型福祉制度に改革しなければ二つの制度は連携することも、補完し合うこともできず、ましてや相乗効果を上げることもできません。そのうえで、介護保険でNPO法人や株式会社など多様な供給主体の参入を認めたように、高齢者福祉分野も市町村や社会福祉法人だけではなくボランティアやNPO法人、株式会社などにも、それぞれが相応しい役割を担えるような改革が必要です。介護保険との整合性を図るためだけの老人福祉法の一部改正が来年四月予定されていますが、老人福祉法の抜本的改正が全く議論されないのが残念でなりません。

 

 

 

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