巻頭言
近隣の助け合いが原点
さわやか福祉財団理事長 堀田力 No.25
「一人では、車イスのおじいさんを持ち上げられないので、手伝いに来てよ」という仲間からのSOSの電話が入ったので、Aさんは、車でそのアパートに駆け付けた。あるふれあいボランティア団体の仲間が、アパートの一階に住む車イスのおじいさんを理髪に連れ出したまではよかったが、家に入る段になって、四、五段の階段が上がれず、立ち往生したのである。
「だけど、私が着くまで二〇分の間、近所には誰も手伝ってくれる人がいなかったのかしら」というのがAさんの疑問である。
近所に住んでいる人が心の冷たい人ばかりだとは思わない。しかし、なぜか、「ちょっと助けて」と言えない空気ができ上がってしまっている。そういう空気を追い払い、日本中に新しいふれあい社会を築きたいというのが、さわやか福祉財団の最終目標である。