以上、述べてきたように、先進企業で行われているCS評価を行政機関に適用するためには、現状ではまだ行政機関側の体制が整っているとは言い難い。しかし、前述の3項目にあるように、情報提供・説明の充実により期待を適正な水準とし、その結果として生じる的確なCSを調査・分析し、それを基に行政サービスを改善することにより、国民のニーズに合った行政サービスを実現するとともに、行政サービスの的確な評価及びCS調査への協力が行政の改善に役立つことを国民に認識させることが期待される。官民接点情報システムは、国民への情報提供機能や説明機能及び国民のCS調査機能として大いに期待されうるものである。以降では、国民との情報交換の接点である官民接点情報システムをCS戦略の有力なツールとして位置付けるとともに、情報システム自体もCSの活用によって改善されることにより、両者が相乗効果によって一層のCS向上を実現するような方策を検討する。
1-3 わが国の行政機関における行政評価に対する取組
前項で述べた通り、行政機関が民間企業のCS手法を導入するに当たっては、事業に関する情報提供、CS調査及び事業へのフィードバックの仕組みが必要である。この中で、官民接点情報システムと関係が深い情報提供及びCS調査に関しては、2章の官民接点情報システムの動向調査で述べることとし、本節では行政評価及びフィードバックに関する行政機関の取組の現状を調査する。
(1) 行政評価への取組の現状
現在行政機関で行われている行政評価は必ずしもCS評価を用いるものとは限らず、行政機関の自己評価によるものも多いが、いずれにしても施策や行政サービスに関して評価を行い、次年度の継続事業や新規事業に反映させるという仕組みは、前述のCS手法導入においても有用なものと想定される。行政評価は、具体的には行政活動を何らかの方法でチェックし、行政活動の改善につなげるものであり、事業執行の効率化や総合計画の進行管理、事業自体の廃止や改善に役立つものである。評価システムの名称は違うものの、現在多くの行政機関において行政活動を評価するシステム(以後、「行政評価制度」という)の導入が図られている。