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3] CS調査の困難さ

企業の場合は、自社の商品・サービスの利用者がCS調査の対象であるが、行政機関の場合は、現在の行政サービス利用者のみならず、利用ニーズがありながら何らかの問題やサービスの利用効果の認識不足により利用していない国民もCS調査の対象とする必要がある。また、行政機関ではインターネット上でのパブリックコメント募集、大臣や首長への手紙、住民モニターのように国民に意見を求める仕組みを整備しているが、商品にアンケート葉書を同梱するような民間企業の手法と比較すると、国民にとっては遙かに敷居が高い。さらに行政機関では、前述のようにCS調査及び評価を実施してもその結果を事業にフィードバックすることが困難な場合が多く、意見を出しても反映されないことにより、国民の協力意欲が低下することも想定される。

このような要因により、国民に対するCS調査は困難となることが想定される。

以上のように、国民の意識・行動において適切な期待が形成されていないためCSも適切な内容になっていないこと、CS調査及び評価を実施しても結果を事業にフィードバックされにくいこと及びCS調査そのものが容易でないことなどにより、行政機関におけるCS評価の導入が困難な状況が生じていると考えられる。

 

(3) 行政機関へのCS導入に向けた検討

前述のような国民の意識・行動への対応については、以下のようなことが考えられる。

1] 適切な期待の形成(情報提供・説明)

国民に行政の提供するサービスに対する適正な期待を持たせるための努力を行う必要がある。具体的には、施策や行政サービスにかかるコスト情報や社会全体から見た必要性や想定効果等について、誰でもが分かるような形式での情報提供を行い、国民の理解を深めることにより行政サービスに関する期待を適正な水準に近づけることが必要と考えられる。また、国民の評価が施策や行政サービスに的確に反映されることを実例をもって国民に示し、行政に対する関心を高め、日頃から施策や行政サービスヘの関心を持ってもらうことも重要と考えられる。この概念を前節で示した顧客満足(不満足)のモデルに適用したものを図1-11に示す。

 

 

 

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