「ヒヤットした、ハットした」、しかし、たまたま運が良くて事故や災害にならなかったなどは職場に限らず日常生活のいろいろな場面でしばしば経験することである。労働省の調べでは、製造業では65%、建設業では80%の作業者がヒヤリ・ハットした経験があると答えている。災害をなくそうとすれば、災害に発展する可能性のある「ヒヤリ・ハット事故」をなくさなくてはならない。
これがいわゆる「ストップ・ザ災害」ではなく、「ストップ・ザ事故」といわれるゆえんである。ヒヤリ・ハット事故も死亡災害も同じ要因で起こる以上、事故の発生の原因や背景を見落としていたのでは根本的な解決はありえない。
そこで多くの事業場では安全を先取りするために、ヒヤリ・ハットの事例を収集し、活かそうという取り組みがされている。つまり、このヒヤリ・ハット事故の背後には、その事故の原因となった「不安全な状態」と「不安全な行動」がある。従って、この「不安全な状態」と「不安全な行動」に気付き、これを改善し、取り除いていくことの積み重ねが重傷災害だけでなく、全ての事故や災害を防止するために大切なことである。
なお、「不安全な行動」の要因には、作業者自身の心と身体の健康状態によって引き起こされるものも少なくない。従って、自分自身の健康状態の維持・増進にも十分な配慮が大切である。