日本財団 図書館


トランジスタの動作を最も多く採用されているエミッタ接地の接続の場合について次に説明する。

図2.72に示すように、コレクタCに負の電圧を、エミッタEに正の電圧を加えると、BとCとの間にPN接合部に電流阻止方向の逆電圧がかかったことになるので、BとCの間には殆んど電流は流れない。次でエミッタEに正、ベースBに負となるような電圧(バイアス電圧)を加えると、EB問のPN接合に対し、順方向電圧がかかったことになるのでエミッタEの正孔((+)電荷に相当)はベースに向って流れ込む。ところがベース層は極めて薄いので、大部分の正孔はベース層を通り抜けてコレクタCとの境界面に達する。

 

118-1.gif

図2.72 PNP形エミッタ接地

 

ここまで来ると正孔はコレクタCに加えられている負の電圧により引張られてコレクタ側に急に吸い込まれる。しかしベース層を通過する際、正孔の一部はベース領域内で電子((-)電荷)と結合して中和するのでベースから不足分の電子の補給を受けるために直流IBが流れる。エミッタに流れ込んだ正孔即ちエミッタ電流の大部分はコレクタ直流電流ICとなる。電流IE、IB及びICの間にはIE = IB + ICなる関係がある。

エミッタ接地の場合のトランジスタの出力静特性の一例を図2.73に示す。この図はベース電流を幾通りかに選び、それぞれの値を一定としてコレクタ電圧対コレクタ電流の関係を示したものであるが、コレクタ電圧10Vにおいて、ベース電流を100μA変化させると、コレクタ電流が約9.5mA(100μAの95倍)変化することを示している。

トランジスタでは通常、入力電流をベースとエミッタ間に加えると、コレクタから増幅される出力として電流を取り出すことができる。エミッタ接地のトランジスタ回路でエミッタとベース間に微少交流入力信号電圧を加えて、コレクタ側に交流出力電流icが2.74図に示すように電流が増幅されて取出される。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION