しかしこれらの循環調節ペプチドが亢進している群では、腎臓だけでなく他の心血管系合併症へも影響を及ぼしている可能性あり、High-risk groupとなることが示唆された。また循環調節ペプチドで△mAlb動態と△BNPは有意な関連性を示した。△BNPは結果では示さなかったが、LVMI強い正相関を示しており、また同様に△mAlbもLVMIと相関することより、心臓の負荷指標として、△mAlbの程度が表されてる可能性が示唆された。最後に高血圧群において、尿中mAlbやLVMIの薬物療法による治療の修飾について検討した。症例数が少ないことと投与前に既に心血管系合併症の進んだ症例のため、投与前の△mAlbやLVMIの標準偏差が大きいため、△mAlbやLVMIにおいてはACEI群Ca拮抗剤群とも有意な治療効果は見られなかった。しかしACEI群ではLVMIの減少傾向が見られた。これは同等の降圧レベルであればCa拮抗剤よりもACEIの方が左室肥大退縮効果が優れているという報告9)と一致する。尿中mAlb動態については両群とも現時点では有意な効果は見られなかった。しかし尿中mAlb動態においては症例を増やしたりや経過を長年追うことにより両薬剤の糸球体血行動態を介した良い効果現れてくる可能性があり、今後の検討が待たれるところである。
今回の検討では運動負荷による尿中mAlbが高血圧患者で増加する傾向があり、その増加度と心血管合併症の程度の関連性が明らかになった。このことより尿中mAlbの測定は高血圧性心血管系合併症の一つの指標として有用である可能性を示唆された。運動負荷により尿中mAlbが増加する原1因ついては、血圧値や腎血行動態さらにはそれに関与する血管作動性物質の変動などが考えられる。今回の研究では明らかにできなかったが、詳細は今後の検討が待たれるところである。
尿中mAlbの測定は航空乗員の高血圧患者に潜在する心血管系合併症の検索に有用な可能性が示唆された。