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この結果は低圧低酸素に適応するために代償的に血流の増大を必要とする航空機内環境において絶食状態は循環状態を維持、安定させるのに適していないことを示すものである。すなわち、低圧低酸素の環境において絶食状態での運動負荷は脳循環あるいは心機能に大きく影響を及ぼす可能性が高いことが示唆される。

航空身体検査における本研究の意義

旅客航空機の機内は低圧低酸素であり、乗務員にとっては心血行動態的に常に負荷が加わっている状態である。また、乗務中さまざまな形で精神的ストレスや運動負荷が加わるため、実際には高度以上の低酸素状態である、高度6000フィートで軽い下肢の運動を行なうと動脈血酸素分圧は10mmHg程度低下する2)。これは高度8000フィートでの動脈血酸素分圧に相当するものである。すなわち航空機内での動作や運動は予想以上に心臓、循環器系に大きな影響を及ぼしている。さらに、水分や食事が摂取できていない状態では脳循環あるいは心機能への影響が大きく疲労感を増強させる可能性が高い。

本研究結果は航空機乗務に際して、予め食事や飲料水を適当量、摂取しておくことの重要性を示すものであり、航空機乗員の航空身体検査基準の見直し時の参考となる。

 

5. 結語

低圧低酸素状態である航空機内環境は運動負荷あるいは絶食状態では心血行動態、脳循環に大きく影響を及ぼす可能性が高い。

 

 

 

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